自身がプロデュースするジム「LOVE WIN」で会員を指導する多田悦子さん(右)=神戸市中央区栄町通2
自身がプロデュースするジム「LOVE WIN」で会員を指導する多田悦子さん(右)=神戸市中央区栄町通2

 一発のパンチに、未来を切り開く力があると信じている。A4判用紙3枚。手作りのマニュアルには「欠乏感の充塡」「自己否定の解除」など心の機微に迫る言葉が並ぶ。プロボクシング女子ミニマム級で世界主要3団体を計4度制し、2023年に現役を引退した多田悦子さん(45)=西宮市出身=は、昨年から神戸市内でアルコール依存症の脱却を目指す人たちの支援に挑んでいる。11月10~16日は「アルコール関連問題啓発週間」。元世界王者は今も笑顔で拳を握る。(船曳陽子)

■普段は優しい母の異変、酒を飲むと別人に

 神戸市中央区の「宋神経科クリニック」は、アルコール依存症に特化し、外来で治療する専門医院。宋慎平院長は、断酒指導だけでなく、依存を引き起こす「生きづらさ」にも目を向ける治療を行っている。そこで週2回、多田さんは患者に「笑顔プログラム」と題したトレーニングを行う。

 50分ほどのプログラムは、ミット打ちやサンドバッグといったボクシング以外にも、テニスボールを片手でキャッチするビジョントレーニングや、押し相撲のように体幹を使うもの、声を出して笑顔を競うものなど多彩だ。