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兵庫県の豊岡市役所に勤務する40代の職員の職歴を表す円グラフ。左が女性職員=豊岡市内
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兵庫県の豊岡市役所に勤務する40代の職員の職歴を表す円グラフ。左が女性職員=豊岡市内

 出来上がった二つの円グラフを目にして、兵庫県豊岡市の職員、古橋智子さん(47)は驚いた。一つは2分割に、もう一つは7分割にされ、いずれも入庁からの職務歴を示していたからだ。

 2019年に市役所内で5回にわたって開かれた「中堅女性リーダーシップ研修」。仕事上で「もやもやすること」、変えたいことなどをチームに分かれ、最終日に発表する。あるチームは特定の職員の職務歴を男女で比較することにした。

 その結果、女性職員が担ってきた仕事は「住民サービス・窓口」「庶務」の2種類。男性はそれらに加えて「対人折衝調整」「企画調査研究」「財務経理」などの計7種類。円グラフにすると違いが際立った。

 実は、女性職員のモデルは古橋さんだった。1998年に入庁。配属先では男性上司から「男性がほしかった」と言われた。他の業務も任されている後輩の男性職員の横で、伝票を切るなど庶務業務を割り当てられてきた。

 30歳の時に出産し、最初の育休を取った。復帰後、異動はあったが、支所を転々とした。ずっと戸籍や住民基本台帳などを扱う業務だった。本庁で政策決定に携わることはなく、他部署との調整などもない。

 「新しいことを覚えたいので、せめて別の業務をしてみたい」。上司に相談したこともあったが、3人の子育てをする古橋さんには「慣れている業務を」と変わることはなかった。異動時に引き継ぎをするのも受けるのも女性だった。同年代の男性は予算を組み、執行することが当たり前になっているが、自分は「40過ぎてもそんなことも知らないの」という顔をされる。

 「思い通りに子育てをさせてもらえてありがたかった。だから、なおさら何も言えなかった」

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 「行き過ぎた『配慮』だったのだろう」。ジェンダーギャップ対策室の岸本京子参事は話す。結果的に、出産後に昇進や昇格から遠ざかる「マミートラック」に陥っていた。

 18年に実施した職員意識調査では、男性は年代が上がるにつれ、働きがいが高まるが、女性は40代を境に減少し、「自信がない」と感じる職員が増える傾向が見えた。8割が働きやすさを感じているが、男女別で分けると女性は10ポイント低いことや、子育てに関わる制度への認知度も男性が低いことなども分かった。

 担当職員から報告を受けた当時の市長中貝宗治さん(69)は「うすうす気付いていたことではあったが、ここまではっきりと差があるとは衝撃だった。大変申し訳ないことをした」と話す。自戒も込め、施策説明の場では二つの円グラフを用いるようになった。

 女性管理職の割合は、18年の7・7%から、22年は17・6%に増えた。偏りのない人事配置も心がけられている。男性の育休取得者も徐々に増えている。

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 古橋さんは今は会計課の係長級の立場についた。業務を通して役所全体の仕事が見えてくる。給付金など国の動きが関わってくるので、新聞をよく読むようになった。

 フロアを見渡せば、窓口業務に男性の姿が増えた。若い女性がときには長靴を履いて現場に出向き、男性上司と意見を交わす姿が生き生きして見える。「チャンスをもらっているな」と感じる。

【メモ】2021年の公務員の管理職に占める女性割合は、兵庫県内の平均が18・8%で全国平均(16・8%)を少し上回る。阪神間で比較的高い傾向はあるものの、市町の人口規模との関連は低く、芦屋や赤穂、加西、加東の各市は30%を超える一方、加古川や洲本、小野など10%を下回る市もあり、上郡町はゼロと、大きな差がある。

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