神戸新聞NEXT

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスの越境攻撃を受け、イスラエル軍がガザでの戦闘を開始してから3年がたった。昨年10月にトランプ米大統領の和平計画に基づく停戦が発効した後も、軍はハマス幹部らを狙った攻撃を続けており、女性や子どもを含む多くの民間人を巻き添えにしている。

 ガザ保健当局によると、パレスチナ側の死者は7万4千人を超え、停戦発効後も1400人以上が死亡した。越境攻撃で約1200人が殺害されたイスラエルは「自衛」を主張するが、建物という建物を破壊し尽くす攻撃は正当化できない。

 人道危機は深刻だ。イスラエルが国連機関の物資搬入を制限しているため、住民の多くは食料を十分に得られず、疫病におびえている。

 国際刑事裁判所(ICC)は、ガザへの食料供給を阻み、飢餓を武器に利用した戦争犯罪の疑いがあるとして、ネタニヤフ首相らへの逮捕状を出している。イスラエルは直ちに攻撃を停止し、国際社会の人道支援を全面的に受け入れるべきだ。

 戦後のガザ統治にも暗雲が漂う。米国が主導する暫定統治機関「平和評議会」は約3800億円規模の復興計画を発表し、人道支援や治安維持など計66のプロジェクトを進める方針を示す。しかし、軍の撤収時期はハマスの武装解除後とするイスラエルと、武装解除の先行を否定するハマスの主張が対立し、展望は開けていない。

 トランプ氏は昨年2月、米国がガザを所有しリゾートを開発する構想を打ち出した。ネタニヤフ政権の閣僚も先月、200万人超のパレスチナ人を他国に強制移住させる計画に言及した。「民族浄化」につながりかねず、到底容認できない。

 パレスチナ全域での治安悪化などを理由に、自治政府は11月に実施予定の評議会(議会)選挙を来年9月に延期した。民意を統治に反映できる体制づくりが急がれる。

 中東の恒久和平を実現するには、1993年9月のオスロ合意に基づき、パレスチナとイスラエルの「2国家共存」が前提となる。しかし、最近は合意を葬り去るような動きが加速している。

 イスラエルは、パレスチナ自治区のうちヨルダン川西岸への入植を活発化させ、12平方キロに約3400戸を建設する計画を進める。住民への暴力もエスカレートしているが、後ろ盾の米国は見て見ぬふりだ。

 「力による支配」を強引に推し進めれば、イスラエルと米国の孤立はますます深まる。国際法を基軸とする「法の支配」を順守し、国際協調に回帰するよう、日本も働きかけを強化せねばならない。