自身を選挙で支援しなかった首長の自治体の道路予算を「大幅にカットした」と発言したことなどが問題となった簗(やな)和生農相が辞任した。高市早苗首相による事実上の更迭となる。内閣改造から1カ月足らずで閣内から去る異常事態である。任命した首相の責任は極めて重い。
簗氏は2月の衆院選で栃木3区から自民党公認で立候補したが、無所属候補に敗れて比例復活で議席を得た。5月に地元で開かれた党の会合で、首長が対立候補を支援した栃木県那須烏山市と那珂川町を名指しして道路予算を大幅に削減したと発言していた。9月末の週刊誌報道で発覚し、後に撤回、謝罪した。選挙で敗れた腹いせに有権者をどう喝したとも受け取られかねない暴言であり、辞任は遅きに失した。
野党の追及を受けた簗氏は国会でも納得のいく説明はできなかった。首相は消費税減税関連法案を重視しており、国会審議を乗り切るには交代は避けられないと判断した。
政治家の遺恨によって予算配分が左右されるなどあってはならない。簗氏は国会議員としての資質も疑われる。辞任で幕引きを図ることは許されず、説明を尽くすべきだ。
見過ごせないのが、後手に回った首相の危機対応である。
首相は、問題発言の発覚後も「不適切で、厳しく注意した」「とにかく働いて、仕事で返して」と続投方針を明言した。高い内閣支持率を維持する中、批判を軽視したとすればおごりにほかならない。
新たに、過去の衆院選で簗氏の陣営が支持者をシャトルバスで無料送迎した公選法違反疑惑が浮上し、傷口を広げた。簗氏は「スタッフが選挙管理委員会にバスを借り上げる前に確認した」と予算委員会で答弁したが、共同通信の取材に対し、栃木県選管の担当者は「問い合わせがあれば公選法違反に当たる可能性があると回答するはず」と述べており、疑念を払拭するには程遠い。
簗氏の入閣は首相の肝いり人事とされる。首相は衆院選で簗氏の応援に入り、「私の知恵袋」などと持ち上げていた。そもそも派閥の裏金問題への関与や、過去に性的少数者への差別発言をしたことで物議を醸した人物だ。当初から閣僚への起用には厳しい見方があった。にもかかわらず、私情でかばい、混乱を長引かせた。首相自身の判断の甘さが事態収拾を妨げている。
閣内では、関芳弘文部科学相(兵庫3区)が衆院の内規に違反し議員会館で政治資金パーティーを開催していた問題など、火種が残る。
政治への信頼を取り戻すためにも、首相は緊張感を持って体制を立て直さねばならない。
























