学問の自由と独立を、時の政権や政治から守れるのか。「日本学術会議」は正念場にある。
日本の科学者を代表する組織である日本学術会議が10月、国の特別機関から特殊法人に移行し、会員229人で再スタートした。移行のきっかけとなったのは2020年、菅義偉(よしひで)首相(当時)による会員候補6人の任命拒否問題である。
それまでは学術会議が推薦した候補者を、首相が任命してきた。ところが菅氏は理由を述べずに6人を拒否し、学術会議からの再三の任命要求にも応じなかった。
批判にさらされた政府は論点を組織改革にすり替え、法人化を進めた。組織を国から切り離すことで独立性が高まるとアピールしているが、額面通りには受け取れない。
最大の懸念は、政府がその運営に関与できる仕組みだ。首相による会員の任命はなくなったが、首相の決めた「評価委員」や「監事」が活動をチェックすることになった。予算についても政府が「必要と認める金額を補助できる」とした。いずれも政府の管理下に置きたいという発想がみてとれる。
学術会議は抵抗した。こうした仕組みが不当な介入や萎縮を招きかねないと法案の修正を求めた。だが、政府、与党は聞き入れず、昨年6月に新法が成立した。
戦後の1949年に設立された学術会議は研究者が専門分野の知見を生かし、権力の干渉を受けずに国や社会に提言を行う。その立場は、第2次世界大戦で科学者が戦争に協力したことへの反省に基づいている。
国が軍事技術に応用可能な基礎研究費の助成制度を新設したことなどに対し、2017年には「研究への介入が著しい」との声明を発表した。設立の理念からして当然だろう。しかし、政府はこれを良しとせず、3年後の任命拒否につながったとの見方がある。それを裏付けるように拒否された6人は政府の安全保障政策に批判的な主張をしてきた。
政府はいまだに6人を任命しなかった明確な理由を明らかにしていない。新法人に移行したからといって幕引きは許されず、説明責任は免れないことを認識すべきだ。
世界に目を向ければ、科学的知見を軽視し、独善的な振る舞いをするリーダーがいる。平和の構築から気候問題、感染症に至るまで、政治に左右されない科学の独立性が今ほど問われる時代はない。学術会議の存在意義もまさしくここにあろう。
新会長に選ばれた加藤和人大阪大名誉教授は「社会に出よう。人々と熟議し、対話し、行動する」と会員に呼びかけた。覚悟をもって、学問への期待に応えてもらいたい。
























