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 高市政権は発足から1年を迎えた。「数の力」に任せた強引な国会運営などが批判されつつも、内閣支持率は高い水準を保っている。

 発足当初は衆参両院ともに少数与党だったが、高市早苗首相が通常国会冒頭での解散に打って出た2月の衆院選で、自民党は単独で3分の2超の議席を得た。その勢いで、武器輸出の全面解禁、国旗損壊罪法創設、皇室典範改正など国民の懸念が根強い政策転換に踏み切る。宣言通り「国論を二分する政策」を断行する首相の姿勢が、強いリーダーを求める人々に支持されているのだろう。

 だが、強さは独善につながりやすい。自民党内の慎重論に耳を貸さず2026年度予算の成立を急ぎ、国会運営を混乱させたのはその典型だ。簗(やな)和生前農相の「予算カット」発言をかばい、当初続投させた判断も危機管理の甘さを問われた。周囲に助言者がいないなら事態は深刻だ。

 外交ではトランプ米大統領との関係維持に細心の注意を払う一方、台湾有事を巡る首相の発言で関係が悪化した中国との対話は途絶えたままである。中国、ロシアとの接近もいとわない今の米国に頼るばかりでは日本外交の選択肢を狭めかねない。

 首相は電気・ガス代の補助など物価高対策の実績を強調しつつ「成果を実感されていない方が多い」との認識も示した。内閣広報室が27年度予算要求で前年度の10倍を計上したが、首相に都合のいい発信を増やすだけでは国民の納得は得られない。

 首相は情報発信に交流サイト(SNS)を多用する。一方、会見や国会出席の頻度は歴代首相に比べて少ない。国のトップとして正面から質疑に応じ、異論に向き合う姿勢に欠けている。幅広い英知を集め、現場の課題をすくい上げる対話の仕組みを築くことに注力するべきだ。

 政権2年目も国論二分の重要政策が待ち構える。首相が「悲願」とする消費税減税は財源が明示されないまま関連法案の国会審議が始まった。29年度に導入する就業者負担軽減支援金制度も所得要件や支給額がはっきりしない。これで制度の是非を判断しろとは無理な話である。

 年末に予定される安全保障関連3文書の改定は、非核三原則の見直しや原子力潜水艦の導入など、専守防衛の国是を踏み越える方針転換の是非が論点となりそうだ。比例代表を減らす衆院議員定数削減法案は少数意見の反映を妨げる恐れがある。

 いずれも平和国家の行方と民主主義の根幹に関わるもので、数の力で押し切っていい問題ではない。「首相1強」がこれ以上の独善に陥らないよう、野党はもちろん、第1党として政権を担う自民党もブレーキ役を果たす覚悟を持たねばならない。