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後藤希友投手(右)の金メダルを噛む河村たかし市長=4日(提供・共同通信社)
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後藤希友投手(右)の金メダルを噛む河村たかし市長=4日(提供・共同通信社)

 河村たかし名古屋市長が東京五輪ソフトボール日本代表・後藤希友投手(20)の表敬訪問を受けた際に、本人の了承なく金メダルを噛んだ問題は海外でも報じられ、大きな批判がわき起こった。東京五輪・パラリンピック組織委員会などが介入し、金メダルは新しいものに交換される。河村市長の行為は法的にどのような問題をはらんでいるのか。かつて歌手デビューし、アイドルとして活躍した後に法曹界に転身した平松まゆき弁護士にQ&A方式で解説してもらった。

 Q 河村市長が金メダルを噛んだことが問題になっていますが、なんらかの法的追及が可能でしょうか?

 A 法的追及は刑事と民事で分けて考える必要があります。まず刑事責任としての器物損壊罪があります。もし今回、金メダルを噛んだことによってメダルに傷がついたりしていれば本罪が成立し得ます。また、「損壊」というと物理的に壊した、傷をつけたことを想像されるかもしれませんが、法律では「物の効用を害すること」とされています。これは、本来予定されていた物の使い方を害するというイメージで、たとえば食器に尿をかける、車に排泄物を塗る、他人に届いた荷物を隠す、という行為も「損壊」として捉えられます。

 今回のメダルを噛むという行為ですが、少なくとも他人に無断で噛まれるということは到底予定していなかったでしょうし、今後、噛まれたメダルを後藤投手は何事もなかったようにまた首からかけられるでしょうか。ましてコロナの時代ですからね。感情的には「損壊」と言いうるとは思います。ただし器物損壊罪は被害者本人の告訴が必要ですので、警察が独断で立件することはありません。

 Q 民事責任はどうですか。

 A 民事責任ですが、不法行為責任を追及し損害賠償請求することは十分に可能だと思います。民事では金メダルを物理的に壊した、傷つけた場合でなくとも、精神的ショックを受けたことを理由に不法行為は成立し得ます。無断で噛まれたこともさることながら、せっかくつかんだ夢のメダルがもはや汚いモノ扱いされている。そのことに対するショックも計り知れないと思います。

 Q 金メダルが交換されるという話も出ていますが、その場合、法的に影響がありますか。

 A 刑事でも民事でも、交換によって「被害回復がなされた」という理屈は法的にはあり得るかもしれません。しかし感情的には交換されたからいいってもんじゃないですよね。むしろ交換がきかない、かけがえのないメダルなわけです。それまでのとてつもない困難や重圧を乗り越えて獲得したあの日の金メダルは、世界にたった1つしかないのですから。法律を扱う人間が言うのもなんですが、ここは法的にどうこうではなく、とにかく後藤選手のお気持ちを最優先して今後について模索していただきたいです。

◆平松 まゆき 弁護士。大分県別府市出身。12歳のころ「東ハトオールレーズンプリンセスコンテスト」でグランプリを獲得し芸能界入り。17歳の時に「たかが恋よされど恋ね」で歌手デビュー。「世界ふしぎ発見!」のエンディング曲に。20歳で立教大学に入学。芸能活動をやめる。卒業後は一般企業に就職。2010年に名古屋大学法科大学院入学。15年司法試験合格。17年大分市で平松法律事務所開設。ハンセン病元患者家族国家賠償訴訟の原告弁護団の1人。

2021/8/15
 

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