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菅首相が事実上の退陣表明した3日から、上げ幅を拡大している株式相場(taa22/stock.adobe.com)
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菅首相が事実上の退陣表明した3日から、上げ幅を拡大している株式相場(taa22/stock.adobe.com)

 菅義偉首相が自民党の「総裁選には出馬しない」と事実上の退陣表明した9月3日から、株式相場は急速に上げ幅を拡大した。次の自民党総裁つまり次の首相として名前が上がるのは、早々に総裁選への出馬表明した岸田文雄前政調会長か、河野太郎行政改革担当相かと予想が飛び交っているが、株式市場で注目度が高いのは俄然、高市早苗前総務相だ。当初は「ニューアベノミクス」と呼んでいた経済政策「サナエノミクス」を掲げたことで、安倍晋三前首相の在任時のように株式相場が上昇するのでは、と期待感が高まっている。

 8日に自民総裁選に立候補することを表明した高市氏の説明によると、サナエノミクスにもアベノミクス同様に「三本の矢」を用意した。まず「金融緩和」、次に「財政出動」、そして「危機管理投資・成長投資」を政策の柱に掲げた。金融緩和と財政出動が安倍前首相の政策と共通している。安倍政権の初期に株高の材料とされたのが金融緩和、いわゆる「黒田バズーカ」なので、どういった手を尽くして再び金融緩和のインパクトを相場に与え得るのか、と期待が高まっている。

 ただ金融緩和の主体である日銀の周辺環境を見渡すと、足元でのさらなる金融緩和は難しいだろう。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、世界の中央銀行は一斉に金融緩和に動いた。世界的にみてこれからは、いかに緩和を縮小するのかという局面だ。そうした中で、日銀だけがさらなる緩和に動くとなると、欧米の緩和縮小の効果を台無しにするといった批判を受ける。まずそうした国際関係から、さらなる金融緩和は難しい。

 加えて、金融緩和の方法も尽きているという問題がある。もともと金融緩和や金融引き締めは短期国債の売買を中心として、短期金利を操作するのが常とう手段だった。しかし短期国債は買い尽くし、長期国債もほぼ買い尽くし、株にまで手を出したら日本一の大株主になってしまった、というのが日銀の現状だ。日経平均が3万円、東証株価指数(TOPIX)はバブル経済崩壊後の最高値を更新する中で、再び株を買い始めることは、どうにも正当化しづらい。

 高市氏の突出した特徴である金融緩和が効かないとなると、河野氏や岸田氏が首相になっても相場への影響はあまり変わらないだろう。実は今回の総裁選は、景気対策するまでもなく製造業を中心としたグローバル企業、つまり時価総額上位企業の収益が絶好調の中での首相選びになる。景気や経済の観点からも「新型コロナウイルスの緊急事態宣言を2度と発生させずに済む首相は誰か」というのが焦点だ。そういう意味では、立候補を表明していない石破茂氏や野田聖子氏を含めても、人流抑制に関する考え方こそ差はあるが、ワクチン接種と治療薬の早期開発によって「出口」をめざし、経済活動にもワクチンパスポートを幅広く活用するという現在の道筋を、大きく転換する動きは見て取れない。

 むしろ違和感があるのは「次期政権への期待感から株式相場が上昇している」という相場解説だ。日本株は2月に日経平均が3万円台に上昇した後、上値が重い展開になった。その間も米国株は最高値を更新する値動きだった。菅氏の事実上の退陣表明を機に、改めて日本株の出遅れ感に市場の視線が向かったのが現在の株高、という程度に受け止めておくべきではないか。振り返ってみれば、2005年の「郵政解散相場」も、2013年の「アベノミクス相場」も、欧米の株式相場が先駆するなか日本株は出遅れていた。

 だから日本株の上昇は、次期首相の政策とは無関係にしばらく続くだろう。問題はいつまで上昇が続くのかという点だが、これはなかなか難しい。ただヒントになるのは総裁選前であるのと同時に、衆院選の直前であるという点だ。1969年以降に実施した衆院選では、解散前日の株価と衆院選直前の営業日(選挙は日曜日なので)を比較すると、すべて上昇している。上昇のピッチに変化は起きるかもしれないが、少なくとも衆院選まで上昇が続くというのは経験則からいえるのではないか。

(経済ジャーナリスト・山本 学)

2021/9/13
 

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