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授業中にじっと座っておくのが特性として難しい子も。実は本人も「困って」います
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授業中にじっと座っておくのが特性として難しい子も。実は本人も「困って」います

■◆はじめに

私の運営する発達支援事業所では、発達特性のあるお子さんが通う保育園や幼稚園、小中学校に、発達支援の専門家(言語聴覚士や作業療法士、公認心理師)が伺い、お子さんの園や学校生活でのお困りごとに対して、担任の先生などと一緒に手立てを考える事業(保育所等訪問支援事業)を実施しています。

その中で、小学校の先生方から「授業中、落ち着かず、離席してしまうことがある」「離席しないまでも、貧乏ゆすりをするなど、落ち着かない様子がある」といったお悩みをよく伺います。こういったお子さんの中には、「多動傾向」の方が多くおられます。

多動傾向のお子さんは、「じっとしていることが苦手」なため、じっと座って受ける必要がある授業では、つい体を色々と動かしてしまったりします。それでも不十分な場合は、立ち歩きにつながることもあります。

こういったお子さんに対して、「じっと座りなさい」という声かけをおこなっても、あまり効果がなく、最後には先生が「座りなさい!」と声を荒げてしまうこともあるようです。

今回は、こういった多動傾向にあるお子さんが、少しでも落ち着いて授業に集中できるような工夫をご紹介します。保護者の方はもちろんのこと、こういったお悩みをお持ちの学校の先生方にもお読みいただければと思います。

■◆多動傾向のお子さんの特徴

多動とは、文字通りソワソワしたり、手足を意味なく動かしたり、じっと座っていることが苦手で歩き周ってしまったりすることを指します。

こういった特徴の裏には、ADHD(注意欠陥多動性障害)が隠れていることもありますが、そういった診断がつかないまでも、特性を持った方は子どもに限らず一定数おられます(クラスの中に概ね6~10%の割合でいると言われています)。

大人の場合は、貧乏ゆすりを良くする、勉強しているときにずっとペン回しをしている、意味なく指を(ピアノを弾いているように)動かしている方もおられますが、これも「動きたい」という欲求を、上手く体で誤魔化しているのです。

こういった他動の特徴は、そのお子さんの「やる気」や「我慢不足」に由来するものではなく、その子の自身の特性に由来するものです。特性とは、脳の特性のことを意味し、ご本人の意思でコントロールできるといったものではありません。分かりやすい例でいうと、ジェットコースターが大好きな人と、苦手な人との違いのようなものです。ジェットコースターが大嫌いな方に、「努力で好きになって」「頑張れば慣れる!」と言っても、「怖いものは、怖い」と聞く耳を持ってもらえないでしょう。

多動などの特性もそれと同じで、「動きたい」「ずっと体を動かしていたい」という気持ちを持つお子さんに対して、「じっとしなさい」というのは、怖いジェットコースターに「慣れるまで乗りなさい」と言っているのと同じということになります。そのため、彼らの特性を理解してあげると同時に、どうすればじっと座ることにつなげていくことができるか、といった工夫を考えてあげることが大切です。

頑張れという声かけや、努力でなんとかなると根性で取り組ませていても、解決することはありませんので、注意が必要です。 

■◆少しでも落ち着いて授業を受けられるような取り組みや考え方の工夫

では、多動傾向のお子さんの特性を踏まえた上で、できるだけ気持ちの負担を強いることなく、少しでも落ち着いて座ることができる方法を考えていきましょう。

大前提として、多動傾向のお子さんは、「動いていると安心する(気持ちが落ち着く)」という点を押さえていただいた上で、以下の工夫についてお読みください。

■対応方法①発想の転換!「座面が動けば、自分は動かなくていい」(環境を整える)

最も誰にも負担を強いることがない方法は、「環境調整(状況を整えてあげること)」です。多動傾向のお子さんでいうと、「動きたい欲求が強い→でも椅子は動かない→ストレスが高まり、自分で動き出す→離席につながる」という流れになります。

ここで発想を転換してみましょう。「動きたい→椅子は動かない」からストレスがたまりますが、もし「椅子の座面が動く」とどうでしょうか。「座面が動けば、体に動き刺激が入るので、自分から動く必要はない」ということにつながります。

具体的な方法としては「(座ったときにちょうど椅子の高さと同じ程度になる)トレーニングボールに座って授業を受ける」という方法がオススメです。トレーニングボールは、常にグラグラと揺れているため、お子さんにとっては「動き刺激」が常に入り続けています。そのため、動きがあることで満足度が高くなりますので、座っているだけで気持ちが落ち着いてきます。

■対応方法②授業中に「動ける機会」を作ってあげる(役割を与えてあげる)

「トレーニングボールに座って授業を受けるなんて、他のお子さんへの説明ができない」といった理由で、実際に導入することが難しい場合も多々あるでしょう。そういった場合は、あえて動く機会を作ってあげることで、気持ちを落ち着かせる方法を試してみてはいかがでしょうか。

例えば、「授業中にプリントを配る役割を担ってもらう」「教室の電気を消すなどの際には、そのお子さんにその役割を担ってもらう」などです。授業の中で、動く機会を与えてあげ、動くことで落ち着く(気持ちの満足)状態を作ってあげると、その後落ち着いて授業に集中できることがあります。

ここでのポイントは、お子さんが授業が始まった後、どのくらいの時間なら着席しておくことができるかの時間を把握しておくのがポイントです。着席することが限界に近づいてきた頃が役割を与えるタイミングとなります。

■対応方法③動いて落ち着くと、また戻ってくることを理解してあげる

授業中動き回ってしまうお子さんは、体が動く感覚が満たされれば、気持ちがニュートラルな状態に戻り、指示を受け入れやすくなることが多々あります。動き始めたときにすぐに座りなさいと声をかけるのではなく、しばらくどのような動きをするか様子を見てみてあげてください。一通り動いた後、自ら席に戻るお子さんもおられます。

■対応方法④クラスメイトのお子さんに理解してもらう

一人だけ役割を与えると、クラスメイトから「どうして〇〇さんだけ、そんな役割があるの?」という疑問が起こるかもしれません。

そんなときは、メガネを使う人の例などで説明してあげてください。「視力が悪い人はメガネをかけますよね。メガネをかけると、見えにくかった黒板の文字が見えるようになって、授業に集中できます。〇〇さんには△△という役割があることで、気持ちが落ち着き、授業に集中しやすくなるのです」という説明をしていくと、理解してもらいやすいです。 

■◆まとめ

・多動傾向のお子さんは、「動くことで気持ちが落ち着く」という特性を持っています

・十分に動いた後(運動や屋外活動の後)などは、比較的落ち着いて集中することができます

・少しでも落ち着いて授業が受けられるようには、以下の方法を試してみてください
(1)椅子の代わりに、トレーニングボールに座って授業を受ける
(2)プリントを配る係をお願いするなど、授業中に動く機会と役割を作ってあげる
(3)動いた後は気持ちが落ち着くという特性を理解してあげる
(4)分かりやすい例で、クラスメイトのお子さんにも理解を促す

◆西村 猛 幼児期の発達と発達障害が専門の理学療法士。発達支援の事業所を複数経営。子どもと姿勢研究所代表。全国各地の保育園で運動発達や発達支援に関する講義を実践中。YouTubeチャンネル「こども発達LABO.」では、言語聴覚士の妻と二人で、言葉と体の発達や発達障害に関する情報を発信中。

2021/10/5
 

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