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10月8日は「入れ歯の日」(chaffflare/adobe.stock.com)
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10月8日は「入れ歯の日」(chaffflare/adobe.stock.com)

 10月8日は「入れ歯の日」だそうです。歯科医であり、吉本所属の芸人、パンヂー陳(本名・陳明裕)が入れ歯にまつわる古今東西のうんちくを語ってくれました。歯磨きを怠ると、怖いことになりそうです。(聞き手・山本 智行)

--どうも、こんにちは。10月8日は「入れ歯の日」という事で取材にうかがいました。

陳歯科医:他に取材行くとこないんかいな?まっ、確かに10月8日は全国保険医団体連合会が「入れ歯の日」と決めていますが、山本さんも入れ歯にならないで、いい歯を、保てるよう頑張って歯磨きしてくださいね。

--実はちゃっとやばくなってきているんです。まぁ、そんなことより、10月8日で語呂合わせで、イ(1)レ(0)バ(8)って、この手の記念日って、何でこうも安易なんですかね。

陳歯科医:まあ、確かに来月、11月8日いい歯の日も、単純に1(イ)1(イ)8(ハ)の語呂合わせだし、6月4日なんて、6(む)と4(し)で、むし歯にちなんで、昭和3年に日本歯科医師会が「むし歯予防デー」として実施開始しましたが、これって、歯どこ行ったん?って感じですよね。せめて「6月4日の朝8時から開始します」とか言うてくれんと納得できないですよね。歯科医師会もさすがに無理があると思ったのか、今は6月4日から10日を「歯と口の健康週間」と改めてますけどね。

■勤務医時代に目にした“入れ歯違い”

--そんな6月や11月の話はよろしいから、10月8日の入れ歯にまつわる、歯医者さんらしい話はないですか?

陳歯科医:その昔、神戸大学病院に勤めてた頃、バイト先の老人施設の歯科診療所で、入所者のおばあちゃんが20年来使ってる入れ歯が、その日の朝ごはんを食べようと思ったら「急に合わなくなった」と言うて来られたんですよ。で、診てみると、どう見ても他の人の入れ歯だったので、調べてもらったらやっぱり、隣のベッドのおばあちゃんの入れ歯を間違えてはめてはった事がありました。

--相部屋で寝る時、入れ歯を外して枕元に置いてたら、お年寄りなんで、そりゃ間違うこともあるでしょうね。

陳歯科医:そうなんです。でも、いまだに不思議なのが、もう一人の間違えられた方のお婆さんの方。入れ替わったことも気づかず、他人の入れ歯で機嫌よく朝ご飯を食べ終わってはりました。

--「みなさんも入れ歯は間違えないように気を付けて下さいね」以外、なんともコメントのしようがない話ですね。もっと、ためになる話はないんですか?

陳歯科医:うちの娘が小学生の頃、学校歯科検診で虫歯がありますの紙をもらってきたんですけど、それを見た僕の母が「ちゃんと歯磨きしないから虫歯なんか作るねん!私なんか食べたら毎回、すぐ歯磨きしてるから、虫歯なんか一本もない」って言ってました。

--あー、やっぱり歯磨きは大切なんですね。さすが、陳さんのお母さん。歯磨きさえ、ちゃんとしていれば、お年寄りになっても虫歯を作らず元気に過ごせるんですね。

陳歯科医:そうなんです。確かにうちの母は、当時、元気で虫歯はなかったんですけど、残念ながら総入れ歯だったんですよね。その後、僕が全部インプラントに変えてあげましたけどね。

--なんや、ネタかいな、まじめに聞いて損したわ。

陳歯科医:そうそう、喜寿のお祝いに母にエジプト旅行をプレゼントして一緒に行ったときのこと。現地のツアーガイドの方から「水道水は絶対に飲まないように」と注意されていたんですけど、さすがにホテルのベッドサイドに置いてある水は大丈夫だろうと、朝起きた時、飲もうとしたら、コップの中の水にカスみたいなのが浮かんでたんです。

でも、のどが渇いてたんで一気飲みしようとしたら横に居た母が「あかん、その水飲んだら」って叫ぶんで、やっぱりいくつになっても我が子を案じているんだなと思ったら「それ私の入れ歯、漬けてたコップやがな」ってなこともありました。

■米初代大統領ワシントンは入れ歯だった!?

--そんな陳さんのお母さんの入れ歯にまつわる話じゃなくって、もっと誰でも知ってる人の入れ歯にまつわる話をプリーズ。

陳歯科医:じゃ、あの桜の木を斧で切ったことを正直に父に話した逸話で有名なアメリカの初代大統領ジョージ・ワシントンが入れ歯だった話はご存知ですか?

--いやぁ、それは知りませんでした。というか、そもそもワシントン大統領が入れ歯かどうか、そっち方向に興味がわきませんから。
陳歯科医:うちの診療室にも、ワシントン大統領が実際に使っていた入れ歯の写真を飾っていますが、当時の総入れ歯は上下がバネで繋がっていたので、常に口を閉じて噛んでいないと口から飛び出してしまう事があったようです。

そのせいか1ドル札に限らずワシントン大統領の肖像画などの表情は、必ず口をへの字に曲げたものばかりです。おそらく入れ歯が吹っ飛んでしまうのを防ぐために常に唇に力を入れていなければならなかったのだと推察されます。

ちなみにワシントンは2期8年大統領を務めたのですが、3期目に立候補しなかった理由は、一説には入れ歯のせいで演説が困難になったからだとも云われています。

--ということは、1つの入れ歯が、その後のアメリカの歴史を変えたかも知れないってことですね。

陳歯科医:アメリカ大統領といえば、先代のトランプ大統領の頃、フェイクニュースが話題になりましたが、ちなみにワシントン大統領の桜の木の逸話もウィームズ牧師による創作だといわれています。この幼少期のエピソードがワシントンの“誠実”で正直なイメージ作りに一役買っていますので、フェイクニュースの走りといえるんじゃないでしょうか?

--まっ、実際はどんな人やったかは分かりませんからね。次行きましょか?

陳歯科医:でも、歯医者の立場で推察すると、ワシントンは若い頃から虫歯や歯周病に悩まされていたという話ですので、おそらく食後の歯磨きに関しては、サボり気味で“誠実”さが発揮できてはいなかったと思われます。

■日本の入れ歯は木製だった

--日本の話はないんですか?

陳歯科医:第14代将軍、徳川家茂公は21歳の若さで亡くなっていますが、大の甘党で、ほとんどの歯が虫歯だったそうです。死因は脚気という説もありますので虫歯で歯が痛くて、ビタミンB1の摂取量が極端に減ってしまったことが原因かもしれませんね。

彼が、入れ歯だったかどうかは知りませんが、当時の日本は木製の入れ歯で、歯医者は木製彫刻を作る感じで入れ歯を作っていたようで、今も当時の精巧な木の入れ歯が残っていますからワシントン大統領も日本の入れ歯を使っていたら3期目に立候補していたかもしれませんね。

--いえいえ、家茂は明治維新のちょっと前なのでワシントンよりだいぶん後でしょう。

陳歯科医:山本さん、えらい詳しいですね。

--大河ドラマの渋沢栄一、ちゃんと見てましたからね。吉沢亮、格好いいです。ま、昔は虫歯になっても今のような麻酔もないでしょうから歯を抜くのも大変やったでしょうしね。

陳歯科医:そうなんです。アメリカの歯医者のウェルズは、笑気麻酔で自分の親知らずを痛くなく抜くことができたのですが、1845年の公開実験には失敗してます。翌1846年に同じくアメリカの歯科医モートンがエーテル麻酔を成功させて、ようやく痛みなしで歯を抜けるようになりましたが、それまでは多分死ぬほど痛かったと思います。

例えば、英国のエリザベス1世は、虫歯の痛みがひどくって医者からは抜歯を進められましたが、女王は怖がって受け入れてくれないので、抜歯を促すためにジョン・エイルマーという主教が自分の歯を女王の前で抜いて見せたそうです。

--聞いてるだけで痛そうですから、麻酔なしで歯は絶対抜きたくないです。

陳歯科医:普通はそうなんですけど、フランスの太陽王と呼ばれたルイ14世は逆に“歯がすべての病の源”と信じていたダカンという医者の勧めに従って、痛くもない健全な歯まで全て抜いてしまった。で、咀嚼が十分できなかったせいか胃腸障害と下痢に生涯悩まされていたそうです。

--結局、歯を抜いちゃったせいで逆に“歯が無いことが病の源”になっちゃったんですね。私もきょうは、ちゃんと歯磨きします。

陳歯科医:毎日、ちゃんとしてください。

(まいどなニュース特約・山本 智行)

2021/10/8
 

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