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1979年放送の連続テレビ小説「マー姉ちゃん」(NHK提供)
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1979年放送の連続テレビ小説「マー姉ちゃん」(NHK提供)

娘の前で、母が平然と言う。
「うちのお金が終わってしまったの」
「蓄えがもうみんな終わってしまったの」
唖然とする娘。母は澄んだ目で微笑みながら畳み掛ける。
「何もそんなに深刻になることないでしょ」
「明日のことは思い煩うことなかれ、でしょ」

1979年のNHK連続テレビ小説「マー姉ちゃん」が2021年9月からBSで再放送されているのだが、42年の時を経て、藤田弓子さんの強烈なキャラクターに震撼する人が続出している。原作は長谷川町子の「サザエさん うちあけ話」で、脚本は後に「3年B組金八先生」などを手掛ける小山内美江子さん。藤田さんは、磯野マリ子(熊谷真実)、マチ子(田中裕子)、ヨウ子(平塚磨紀→早川里美)という3姉妹の母親・はるを演じている。夫を亡くした後、娘たちを抱えて豪快に人生を切り開いていく女性で、かつ、熱心なクリスチャンという設定だ。

そして2021年の視聴者に衝撃を与えているのは、他ならぬこの「熱心なクリスチャン」の部分。「東京にアパートを2棟くらい建てられる」(←ドラマの台詞より)ほどの蓄えがあったのに、教会の慈善活動にどんどん寄付してしまい、一家はとうとう無一文になってしまうのである。そのせいで長女マリ子は親友の結婚式に出席できなくなるが、はるは「大丈夫よ、どうにかなるわ」と言い放ち、全く悪びれるところがない。これにはさすがに「なかなかの毒親やな…」「朗らかな狂気」「鬼畜の所業なのに藤田弓子さんだからかわいらしく見えてしまう」「演技力がすごい」などの声がSNSで飛び交う事態に。当時、藤田さんは何を思いながらこの役を演じたのだろうか。リモートで話を聞いた。

■33歳で母親役「すごく面白いキャラクター」

「もちろん、面白いなと思って演じてましたよ。はるさんは決断が早いし、チャンスがあったらどんどん挑戦していくエネルギッシュな人。そして、子供たちの才能をすごく信じていますね。『夫が遺した子供たちだから頑張んなきゃ』みたいな悲壮感が全然ないのも素敵だと思います」

「撮影時は33歳で、(田中)裕子ちゃんが24歳、(熊谷)真実ちゃんも19歳だったかな。正直この年齢差で大丈夫なのかと思いましたが、作り手としては『このお母さんはすごく面白いキャラクターだから、新しい見せ方をしたい』という思いが強かったみたいで、いかにも“お母さん然”とした年齢ぴったりの人ではなく、私を選んだそうです」

しかし2021年の今、あらためて見ると結構ひどい母親だと感じる部分も…。

「(爆笑しながら)極端ですよね。でも『きっとなんとかなる』『明日は明日の風が吹く』という彼女の考え方は、コロナ禍の今だからこそより響くと思いませんか? 今日頑張れば、信じていれば、何とか道は開けるという前向きなメッセージだと思います」

■「あのお母さん、どうなっていくの?」と反響

信仰にまっすぐな藤田さんの演技からは、無邪気な狂気のようなものすら感じられる。42年前の放送時には、どんな反響があったのだろうか。

「やっぱりそんな感じだったと思いますよ。当時の一般的なお母さん像とはずいぶん違いましたからね。ただ、私には身近にサンプルになる人がいて。それは、25歳の若さで未亡人になった自分の母です。義母や義父をきちんと看取った後、親戚が引き止めるのも聞かず『これからはやりたいことをやる』と、私を連れて家を出ました。それから母は、実に楽しそうに暮らしていましたよ。ちょっとはるさんみたいでしょ?」

「再放送が始まってからは、『あのお母さん、どうなっていくの?』『ああ大変、うわあどうしよう』『ほっとくと暴走しそう』という声をよく聞きます(笑)。まだまだ私、はるさんが80代になるまで演じますから。やたら明るくて、周りから愛されて生きているんだなというお母さんですよ。最後までぜひ見届けてくださいね」

ちなみに「マー姉ちゃん」の出演者とスタッフは非常に仲が良く、いまだに交流が続いているという。

「年に1、2回は『マー姉ちゃんの会』を開いています。役者や演出家だけじゃなくて、カメラマン、照明、メイク、美術などのスタッフも参加するんです。今はコロナ禍で集まれないけど、再開できる日をみんな手ぐすね引いて待っています(笑)」

「そもそも42年前の撮影中だって、終わってもみんな離れたくなくて、毎週毎週打ち上げをやっていたくらいですから。『疲れたから帰って休む』ではなくて、逆にみんなで街に繰り出して歌ったり踊ったりして遊んで、また元気になっていたんです」

■キラキラの新人との現場「楽しくてしょうがなかった」

藤田さんの言葉の端々には、「マー姉ちゃん」の現場がどれほど充実していたかがにじむ。

「今までいろんな役を演じてきましたけど、はるさんは一番成長できたと感じる役。というのも、裕子ちゃんも真実ちゃんもデビューしたばかりのキラッキラの新人で、2人はいつも私のそばに来て、『このちょっと年上のまん丸な女優さんは、どんな芝居をするのかしら』という感じで目を輝かせてジーッと観察してくるんですよ。彼女たちに負けないように、そして先輩として範になろうと思いながら、頑張ることができました。素敵な人たちと一緒にやれて、もう楽しくてしょうがなかったですね」

「物語はこれから戦争に突入し、下町なんかは大変なことになっていきます。でも決して暗くならず、家族みんなで支え合って強く生きていく姿が描かれます。マチ子が『サザエさん』を生み出すのもこれからですから。どんどん面白くなるので、楽しんでください。私も毎日見ています。フランキー堺さんが演じる菊池寛、大好きなんです(笑)」

(まいどなニュース・黒川 裕生)

2021/12/1
 

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