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スタッフ専用法被をまとった「湊川隧道部」の部長と副部長。デザインは明治時代に隧道を施工した大倉土木組の法被がベースになっている(画像提供:湊川隧道部)
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スタッフ専用法被をまとった「湊川隧道部」の部長と副部長。デザインは明治時代に隧道を施工した大倉土木組の法被がベースになっている(画像提供:湊川隧道部)

 兵庫県神戸市兵庫区にある日本初の河川トンネル、湊川隧道。1901年の完成以来、それまで度重なる水害に悩まされていた周辺地域の暮らしを守り続け、完成からちょうど100年目の2000年に役目を終えました。1995年に起きた阪神淡路大震災で大きな被害を受けたことにより、新たに建設された新湊川トンネルに引き継いだためです。

 役目を終えた湊川隧道は「近代土木遺産としての価値」が認められ保存することが決定。その翌年、地域住民を中心とする「湊川隧道保存友の会」(以降、保存友の会)が発足し、現在も月に1度の一般公開イベントなどが行われています。

 湊川隧道への注目が高まる一方で、保存友の会スタッフに押し寄せる高齢化の波。継続的に活動を行っていけるようにと、今年5月、保存友の会と連携し、新たな活用を行う団体として「湊川隧道部」(以降、隧道部)が発足しました。多くの人をひきつける湊川隧道の魅力とは?部員のみなさんを取材しました。

湊川隧道の価値
 湊川隧道が認められた近代土木遺産としての価値。それは、隧道建設に携わった人々の大変な努力と思いへの敬意、と言っても過言ではないと筆者は感じています。湊川隧道の施工にあたったのは、現在の大成建設株式会社の前身である大倉土木組。当時はまだ重機などの建設機械がなく、全長600mのトンネルを、ノミやツルハシを使って人力で掘り進められました。

 湊川隧道の着工を決定的にしたのは、1896年8月の台風による大きな被害。湊川の堤防が100mにわたって決壊し、死者38名、負傷者57名を出す惨事となりました。2度とこのような被害を出してはならないと、地元をはじめとする実業家たちが発起人となり、湊川改修株式会社を設立。3年9カ月をかけて明治の大土木工事「湊川の付け替え」が完了しました。

 隧道内部には河川トンネルとしての機能を最大限に発揮するよう、構造や材料にさまざまな工夫が凝らされていることが分かっています。また、トンネル建設の記念碑とも言える扁額(トンネル入口に掲げる長方形の額)には中国古典「老子」に記された「天長地久」の文字が。天地が永遠に変わらないことを願う言葉の中に、自然への畏怖の念が込められているように思います。


 安心して暮らせる地域を守りたいという思いに応える機能性と、秀麗なデザインの両方を持つ土木構造物と評価された湊川隧道。その存在は、地域住民にとって誇りになっていると感じます。

地域の誇りを次世代へ
 この湊川隧道を含めた地域の魅力を、子どもたちをはじめ幅広い世代に発信したいと発足したのが隧道部。部長である前畑温子さん(産業遺産写真家)、副部長の西島陽子さん(まちづくりPRプランナー)を筆頭に、佐藤典和さん(佐藤紙店店主)、手取義宏さん(大阪教育大学教授)、松原永季さん(まちづくりコンサルタント)、垰下憲司さん(兵庫図書館長)の6名が湊川隧道の活用に取り組んでいます。

 いずれも、湊川に活動拠点を置き、活躍するエキスパートたち。さらに保存友の会から、渡邉保さんと佐々木良作さんが顧問として参画し、活動を支えています。

 比較的若いメンバーで構成された隧道部では、オリジナルのロゴも制作し、発信を開始。ロゴは、土木や産業遺産をモチーフにしたデザイン数多く手がけている東京のブランド「マニアパレル」とコラボして制作されました。

 今後、このロゴを使ったノベルティグッズ制作も行いたいと考えているそう。湊川隧道と関わって今年で10年になるという部長の前畑さんは、これからの活動について次のように意気込みを語ってくれました。

 「保存活動を担う団体の高齢化は、全国各地の産業遺産で問題になっています。若手中心で構成された隧道部は、友の会と連携しながら実験的な取り組みも行うことで、隧道利活用の将来性を検討するのが目的。隧道が今以上にもっと愛されて、地域の宝になるよう、子どもから大人まで参加できるツアーやイベント等を開催していきます」

【写真4】
レンガ造りのアーチ構造が見事に表現されたオリジナルロゴの缶バッヂもノベルティの1つ(画像提供:湊川隧道部)

 なお、湊川隧道は河川管理用の通路として取り扱われるため、河川法の適用を受ける施設。安全面から通常は立ち入りができません。このため、兵庫県が保存友の会に委託し、毎月第3土曜日の一般公開や、公的団体による見学、年に1度の通り抜けを実施しています。今後は、これまでの一般公開や通り抜けに加えて、保存友の会と隧道部がタッグを組み様々なイベントを行うことに。

 世代を超えた2つのチームがどのように湊川隧道と周辺地域の魅力を発信していくのか、これからの活動が楽しみです。年内のイベントはすでに満員のため、年明けにもイベントやツアーを開催したいと、すでに準備が始まっている様子。今後のイベント等は、湊川隧道部Facebookページを要チェックです。

(まいどなニュース特約・脈 脈子)

2021/11/30
 

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