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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」という小説が話題になったことは記憶に新しい(silakan/stock.adobe.com)
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「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」という小説が話題になったことは記憶に新しい(silakan/stock.adobe.com)

10年も前のことだが「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら」(著者:岩崎夏海、ダイヤモンド社)という小説が話題になり、小説、映画、アニメとヒットしたことはまだ記憶に新しい(年齢を重ねると10年くらい前のことは最近のことのように思われるのだ)。そのストーリーのなかで重要な箇所として、主人公がピーター・ドラッカーの著書「マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則」(ダイヤモンド社)の「マネージャーの資質」のところにある文章を読んで涙するという場面がある(映画では主人公は笑っている)。

どのような文章を読んだのか引用させていただくと「人を管理する能力、議長役や面接の能力を学ぶことはできる。管理体制、昇進制度、報奨制度を通じて人材開発に有効な方策を講ずることもできる。だがそれだけでは十分ではない。根本的な資質が必要である。真摯さである」という箇所だ。

主人公(岩崎夏海氏も同様だろう)がマネージャーとしての「根本的な資質」=「真摯さ」が琴線に触れたということなので、今回はこの「真摯さ」というところについて着目してみたい。

原文ではどうなっているかというと「integrity of character」とある。これを「マネジメント【エッセンシャル版】基本と原則」では「真摯さ」と訳し、「マネジメントー課題、責任、実践」(ダイヤモンド社1974年発刊)では「人間としての誠実さ」と訳してある。訳者の上田惇生氏が「エッセンシャル版」を著すにあたり、日本においてのマネージャーの必要な資質について熟考されて「真摯さ」と訳を直されたのだろう。

直訳するとすれば「人格の統合」が正確な訳だと思われるが、上田惇生氏の訳にケチをつけることが本意ではない。それどころか「真摯さ」と訳したことにより「もしドラ」が生まれ、ヒットし、多くの方にドラッカーの著書が読まれたことを考えるとその貢献度は大変大きい。ただ、あえてドラッカーがそもそも伝えたかったことはどういうことだったのか、個人的に勝手に考えてみることを御容赦いただきたい。

要するにドラッカーは「人格の統合」で、マネージャーの資質としてなにが必要だと言っているのかだ。ドラッカーの他の著書に「卓越性の追求」という文言が登場する。「能力」(知識・技術)の向上をめざすのは当然に必要だと思われる。卓越性を追求して、「なにで覚えられるか」を意識しなければならない。それと同時に挙げられるのが「価値観」の重要性だ。個人にも価値観があるように組織にも価値観が存在する。組織の価値観を形成していくのは経営者の重要な役割である。「人格の統合」で示したかったのは、この価値観についてだと考える。

ではどのような価値観だろうか。「統合」の反意語は「分離」であるから、「自他非分離」といった自己と他者を分離しないで捉える価値観ではないだろうか。ものごとを客観的にとらえ細分化すると分析が容易になり、評価・批判が可能になる。しかしながらそこには自分自身が存在しない。他人事として捉えているのだ。それに対して統合的な捉え方をするということは、ものごとを主体的に洞察し、共感することが可能になり当事者意識をもつことになる。このことは、マネージャーにとっての重要な資質ではないだろうか。

「もしドラ」では主人公の親友が主人公に対し、たとえ勝利できなかったとしてもそれまでのプロセスが大切なのだと言う場面がある。それに対して主人公はあくまでも結果にこだわると言う。

ドラッカーの有名な言葉に「企業の目的とは、顧客の創造である」とあるように、プロ野球の目的であれば、ファンの創造にあるだろう。高校野球についても多くの熱烈なファンは存在する。また将来有望な選手を発掘する場にもなっている。しかしながら高校野球は、そもそも教育現場の一環であるのでそう単純ではない。ドラッカーのこれもまた有名な「5つの質問」にあてはめて再考してみれば高校野球が存在する目的が見えてくるのではないだろうか。

参考書籍:「ドラッカーと論語」著者:安冨歩(東洋経済新報社)

◆北御門 孝 税理士。平成7年阪神大震災の年に税理士試験に合格し、平成8年2月税理士登録、平成10年11月独立開業。経営革新等認定支援機関として中小企業の経営支援。遺言・相続・家族信託をテーマにセミナー講師を務める。

2021/12/27
 

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