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外からは分からない目の疾患「ビジュアルスノウ症候群」とは…(写真はイメージです)=pathdoc/stock.adobe.com
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外からは分からない目の疾患「ビジュアルスノウ症候群」とは…(写真はイメージです)=pathdoc/stock.adobe.com

 朝、日の光で目が覚めると、透明で細かなチリのようなものが無数に、しかも高速で目の前を舞っている。夜トイレに起きて電気をつけても足元はほぼ見えず、伝い歩きで進むしかない。「砂嵐の透明版というか。小さい頃からずっと続いています。晴れた空や無地の壁だと量がすごくてどっと疲れますね」。創作アーティストのモリチエコさん(34)は、そうため息をつく。日中は部屋の中でもサングラスを着けないと耐えられないという。

■みんなに「見間違いでしょ」と言われ、口に出すこともやめた

 ビジュアルスノウ(VS)症候群と呼ばれる目の病気が注目されつつある。視野全体に無数のモノクロのドットが砂嵐のようにちらつき「視界砂嵐症候群」や「砂漠の砂嵐症候群」とも。東京五輪で金メダルに輝いた卓球の水谷隼選手が明かしたことでも知られるが、視神経の異常によるものと考えられ、原因は不明だ。確立した治療法はなく、症状を緩和させるには高価な医療用サングラスぐらいしかないという。

 モリさんが、自分と他人の見え方がなんとなく違うことに気付いたのは8歳の頃。母に「雨降ってるよ」というと、母は「何言ってるの。降ってないよ」と笑い飛ばした。その後、病院に行くでもなく、誰に言っても「見間違いじゃない?」と言われ、次第に口に出すこともやめた。

■眼科では「脳神経内科に」、脳神経内科では「眼科に」

 だが、18歳で高校を卒業後、仕事でパソコンを使うようになると症状は悪化した。視界が放送休止中のテレビ画面のようになり、長時間見ていられない。ミラーボールのように輝き始めることもあり、偏頭痛の発作は月の半分に及び、たまらず休む日が続いた。病院で症状を説明したが、明らかな異常はなく、視力も異常に低いわけではない。眼科では「脳神経内科に行って」と言われ、脳神経内科に行けば「目のことなら眼科へ」。あちこちの病院を尋ねたが結果は同じだった。

 外の光がまぶし過ぎて、外出時は基本的にサングラスをかけた。友人にも親にも理解されず、「なんで疲れちゃうの?そんなことあるの?」と言われるばかり。だが、24歳の時にわらにもすがる思いで受診した大学病院の眼科で医師に「間違いなく、VSですね」と診断された。「病気だったんだ」。ストンと胸に落ちた気がした。

■専門家「心因性や精神的な問題と誤解されがち」

 兵庫医科大学の三村治名誉教授(神経眼科)によると、VSは小児から若年者での発症が多いとみられ、ひどい場合は読書や日常生活に大きな困難を覚えたり、気分障害や集中力の低下などを起こしたりするという。日々の苦痛にうつ傾向になったり、精神疾患を発症したりする人もいるが、「患者の苦痛の割に、医師を始め社会の理解や認知が進んでおらず、心因性や精神的な問題だと誤解されがち。それが患者をまた追い詰めている」と指摘する。

 多くの人が一人で症状と闘い続けてきたが、近年になり、SNSで自分の症状を発信する人も出てきた。モリさんも3年ほど前からプロフィルに「幼少期からVSです」と書き込んだ。同じ悩みを抱えている人らとつながり「今日ひどい」などとつながると「私もです」「つらいですよね」とメッセージが届く。「共感してくれるだけで心が軽くなる」とモリさん。目に見えない症状を何とか一般の人にも伝えたいと、自身が見えている景色を画像で再現すると「これはつらい」と声が上がった。

 「誰にも理解されず、苦痛と生きづらさを抱えたまま、耐えられず自死を選ぶ人もいる」とモリさん。「治療法はまだなくても、どうか、多くの人に症状を知ってほしい」と願う。

(まいどなニュース/神戸新聞・広畑 千春)

2021/12/31
 

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