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しめ飾りをしたクルマ。最近見かけなくなりました。
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しめ飾りをしたクルマ。最近見かけなくなりました。

 新年、明けましておめでとうございます。お正月というと、むかしはよく「注連(しめ)飾り」をしたクルマを見かけたのですが、最近は珍しくなりました。もともとなぜクルマにしめ飾りだったのか、そもそもしめ飾りとは一体何なのか、ちょっと調べてみました。

■そもそも「しめ飾り」って?

 しめ飾りというのは、お正月に玄関先に飾るしめ縄(しめなわ)のことです。神社などで、神聖な区域とそれ以外を区切るための結界を示す(標す・しめす)ために張られる。それがしめ縄ですね。

 結界ということで、魔を除ける力、悪いものが入ってくるのを防ぐ意味で張られる場合もあります。

 滋賀県の湖東地域などでは、集落の入り口などに「勧請縄」という注連縄を張る習わしがいまも残っています。日本は古くから農耕が根付いていて、たとえば江戸の頃などは人の行き来もあまり盛んではなかったのでしょう。集落の外から入ってくる人やものに対して、怖れる気持ちが強かったのでしょうね。

 良くないものが入ってこないように、ということを願って、お正月には玄関先にしめ飾りをするのですね。

 また、新しい年を迎えるということは歳神(としがみ)様を迎えることとされていて、そのために家の入り口を浄める意味もあるのでしょう。

 クルマに飾るのも、つまりは災厄を除けるため、事故などに遭わないようにするため。新しい年も安全に過ごせますように、という意味でしょう。いつ頃に始まった習慣なのかはわかりませんが、もともと自動車自体そんなに昔からあるものではありませんから、おそらく大正や昭和の時代でしょうね。当時のクルマは普通の人がなかなか持てないような高価なものですから、それこそ大切に扱われていたはずで、リスペクトを込めてしめ飾りをして正月を迎えていたのではないでしょうか。

 しめ飾りというのは、年末に設えて年明けは松の内を過ぎたら片付けるもの…と漠然と思われることが多いですよね。なんとなくクリスマスが終わってから、ただし29日は縁起が悪いので、また31日は「一夜飾り」といって神様に失礼とされるので避けて、まあ28日か30日くらいにしようかな、なんていうのが一般的かも知れません。正式には12月13日、正月事始めの日に設えるものなのだそうです。祇園の芸妓さんや舞妓さん、また噺家さんのような伝統芸能の皆さんなどが師匠に挨拶に行ったりする日ですね。

■身の回りでは1台も出会えず

 と、ここまで書いてきてふと心配になったのですが、そもそもこの「クルマにしめ飾りをする」ということって、いまの人にはいったい何のことかわからない、知られていない習慣なのかもしれないですね。

 いろいろ調べてみると、だいたい1990年代を境に急速に廃れていったようです。なので筆者(昭和40年代前半の生まれです、ごめんなさい)の年代はわりと当たり前に見かけたものだと思うのですが、平成生まれの世代にはほとんど見たことがない、そんなの記憶にないよ、っていわれるかも知れません。

 今年12月30日、ほぼ一日クルマで京阪神地区をあちこち移動していたのですが、注連飾りをしているクルマには一台も出会いませんでした。また、12月31日には筆者の止めている自走式立体駐車場のクルマを見て回ったのですが、全81台中注連飾りをしているのは一台も居ませんでした。

 しかしこれをもって、いまの時代は神信心の心が薄れていったから、とは思いません。初詣は相変わらずの人出ですし、御朱印を集めている若い人も多くなったように思いますし。

 現代のクルマはフロントグリルがなくなってデザイン的に注連飾りがしにくくなったとか、そういう細かい事情もあるでしょう。そして、昔に比べてクルマは特別なものではなくなったこと、カーシェアやリースが増えて自分自身の持ち物という感覚が薄くなってきたことなどもきっと影響していると思います。

 クルマの注連飾り。もしかしたらこれは会社の慰安旅行やジャングル風呂などと並んで、消えていく平成の景色なのかも知れませんね。

(まいどなニュース特約・小嶋 あきら)

2022/1/1
 

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