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「クッキー型の博物館 サクサク」館長、造形師の木山潤平さん
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「クッキー型の博物館 サクサク」館長、造形師の木山潤平さん

江戸時代の絵師・中村芳中(ほうちゅう)が描いた「犬」。鳥獣戯画の「うさぎ」。猫の姿をしたエジプトの女神「パステト」などなど、これらは実は「クッキー型」。京都にある「クッキー型の博物館 sacsac(サクサク)」が製造販売するクッキー型の数々が「めっちゃマニアック!」だと話題になっています。

■ 知識欲をくすぐる驚きのクッキー型が続々

「クッキー型にここまで反響があるとは予想していませんでした」

そう答えるのは「館長」の木山潤平さん(38)。

「クッキー型の博物館 サクサク」は、清水焼の窯元が多く集まる伝統工芸の街、京都の東山にあります。2014年に起業し、2021年11月1日、陶器店が軒を連ねる五条坂の近辺へ移転。古民家を改装した工房をリニューアルオープンしたのです。

注目すべきは、なんといっても驚異のラインナップ。「歴史と文化」「芸術」「科学と学問」「社会」など大まかに8つのカテゴリーに分かれ、さらに「宇宙」「演劇・映画」「オセアニア」など細分化しています。クッキー型に「政治」「軍事」「地質学」なんてカテゴリーが存在する製菓器具ショップは、おそらく日本でここ一軒のみでしょう。

収蔵品(?)の数は現在620種類。「週に二つのペースで新作が生まれる」といいます。可動式の大きな布パネルに吊り下げて展示しており、まさに博物館の様相を呈しているのです。

「もしも自分が博物館や美術館の館長になったら、なにを所蔵したいか。そんな観点でクッキー型を作っています。お墓や棺なんて製菓器具としてはタブーかもしれないけれど、自分が好きなので」

■割れていても楽しめる縄文式土器クッキー

とりわけ人気が高いのは「遮光式土器」など縄文時代の発掘物をかたどったクッキー型。

「クッキーって、割れると価値が下がるじゃないですか。けれども土偶や土器は割れた状態で発掘される場合が少なくない。なので、たとえクッキーが割れてしまっても、むしろリアルに感じられる。割れることを気にせずクッキーをプレゼントできる点が気に入ってもらえたのではないでしょうか」

たとえ割れていても、むしろ遺跡を発掘する気分にひたれるクッキー型。お菓子作りがますます楽しくなりそう。

■専門家に相談しながら成型

なかには試作の段階で専門家にアドバイスを仰ぐ場合もあるのだとか。

「たとえば、点字のクッキー型。京都ライトハウス(視覚障がい者総合福祉施設)に相談にのってもらいながら仕様を決めました。正直に言って、たくさん売れる商品ではないです。けれども、デジタル機器が人々のために貢献できる可能性を見出せたかな」

■はじめはクッキー型の専門店ではなかった

工房は15台もの3Dプリンターやレーザーカッターなどデジタル機器がずらりと並び、フル稼働。

「うちはもともとクッキー型の専門店ではありませんでした。『3Dプリンターやレーザーカッターが使えて、デジタル系のものづくりができる場所を一般の方に提供したい』。そんな気持ちで起業したんです。クッキー型は“3Dプリンターで生み出せるもののサンプル”として作ってみたのが最初です」

はじめは3Dプリンターの試用見本だったクッキー型。しかし焼き菓子の固定観念をくつがえすデザインが「あまりにもすごい!」とたちまち口コミ広まり、注文や来店が殺到。オーダーメイドの依頼はなんと「6000種類を超えた」というから仰天。店舗部分のオープンは平日の午前10時から午後12時30分までの、わずか2時間半。そのような狭き門でありながら、わざわざ他府県から訪れるお客さんが後を絶ちません。

「既存のクッキー型で満足できなかった人が、こんなにもたくさんいたとは。驚きましたね」

■3Dプリンターとの出会いが人生を変えた

2015年から「じょじょにクッキー型専門店へと変化していった」という「サクサク」。館長の木山さんがものづくりに関心をいだいたのは幼少期。木山さんは京都生まれの京都育ち。父は和食の料理人ということもあり、自宅には骨とう品や工芸品などが多くありました。

幼い頃から父に手を引かれて骨董市をめぐる日もあった木山さん。高校ではプロダクトデザインを学びます。そうして次第に「図面をひくだけではなく、実際に手に触れられるものを作りたい」といった想いが膨らみはじめたのです。

京都精華大学の芸術学部へ進学し、立体造形の制作に打ち込んだ木山さん。卒業後は就職し、配属先の部署で「3Dプリンター」に出会いました。その後、家庭でも使えるデジタル系加工機が登場してきたことをきっかけに独立。以来、3Dプリンターの可能性を独自で追及してきたのです。

クッキー型を通じて伝えたい「知る楽しさ」
そうして生み出したのが博覧強記なクッキー型の数々。いったいなぜ、学問とクッキー型を組み合わせようと考えたのでしょう。

 「中学時代まで、得意科目といえば美術と音楽と家庭科でした。5教科と呼ばれる国語、社会、数学、理科、英語の勉強はあまり好きではなかったんです。試験のために暗記するだけ。けれども大人になったら、興味があるものを徹底的に調べるじゃないですか。そうして好きな遺跡や歴史上の人物についてひもとくうちに、『学生時代、こんなにおもしろいものを教えてもらっていたのか』と気がついたんです。クッキー型を通じて、“知る楽しさ”を伝えられたらと」

食欲のみならず知的好奇心もくすぐる「サクサク」のクッキー型。クッキーを焼いてお茶請けにすれば、試験勉強もサクサク進むかもしれません。

*紹介した商品はすべて一つ1100円(税込)

(まいどなニュース特約・吉村 智樹)

2022/1/9
 

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