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昆布を用いた正月飾りの分布図(齋藤貴之さん提供)
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昆布を用いた正月飾りの分布図(齋藤貴之さん提供)

鏡餅の間に挟まれた昆布、橙の下に丸めて立てられた昆布、棒に吊るされた昆布…。縁起物の昆布が正月飾りに使われている事例を全国から収集し、飾り方のバリエーションやその地域分布の謎に迫ろうというユニークな調査が進められている。取り組んでいるのは、天然昆布の主産地である北海道の研究者たち。「北海道で採れた昆布が日本各地でどのように利用され、それぞれの文化の形成にどのように関わっているのかを明らかにしたい」といい、現在、Twitterなどを駆使して情報収集しながら、研究資金のクラウドファンディングも実施している。

調査しているのは、北海道武蔵女子短期大学教養学科准教授で民俗学が専門の齋藤貴之さんを中心とする、北海道の大学教員や博物館の学芸員ら計8人。日本の昆布漁獲量の約95%を占める北海道だが、ご多分に洩れず、近年の昆布漁は後継者不足や高齢化で「どうにも元気がない」(齋藤さん)。そこで生産地の人たち、特に子供たちに「北海道産の昆布がどれほど日本の文化を支えているか」を伝えることで郷土愛や誇りを感じてもらおうと、2015年頃にこの調査を始めたという。

一口に「正月飾り」と言っても、その形態は実に多種多様。一般的にイメージしやすいのは平らな餅を2枚重ねて橙を載せた「鏡餅」だが、三方に生の白米を盛って熨斗鮑や搗ち栗などを飾った「蓬莱飾り」などもある。その一方で、既製品を飾る家庭が増えたことなどから、地域的多様性は急速に失われつつある。

「正月飾りに昆布を使う」習わしは、全国に分布。各地をフィールドワークする中で齋藤さんが特に印象に残ったのは、福井県から京都府北部の若狭湾沿岸地域に伝わる「巻いた昆布、または昆布を巻いた橙を三方に盛った米の中心に置く」飾り方だ。「一体これは何なんだ? とビックリしました」と齋藤さんは笑う。同様の形は、九州の諫早湾沿岸地域でも確認できたという。

他にも鏡餅の下に昆布を「敷く」のではなく、上に「載せ」たり隣に「添え」たりするパターン、魚やスルメなどと一緒に棒に吊るす、縁起物としてしめ飾りに付ける…など、地域ごとに特色がある。齋藤さんは「飾り方は思っていた以上に多彩。しかも、柳田國男が唱えた『方言周圏論』のように同系統の飾り方が同心円状に広がっているわけでもないところが面白い」と話す。正月とは関係のない余談だが、お盆の季節、岩手には墓石の上に昆布を載せて水を掛けるという風習もあるらしい。

齋藤さんによると、昆布に着目した正月飾りに関する先行研究はほとんどないといい、「歴史的背景や地域的多様性を探りながら、その全国的な分布の実態と特徴の整理を行うことで、“語られていない”歴史情報を読み解いていきたい」と意気込んでいる。

齋藤さんら調査チームは、学術系クラウドファンディング「academist(アカデミスト)」で調査費の支援を呼び掛けている。2月3日17時まで。

情報提供も歓迎。昆布を使った正月飾りを見掛けたら、画像と地域を齋藤さんまでメールするか、「#正月飾り昆布」とハッシュタグを付けてぜひTwitterに投稿を。齋藤さんの連絡先は、t-saito[at]hmjc.ac.jp([at]を@に変える)

(まいどなニュース・黒川 裕生)

2022/1/21
 

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