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左から、中国・習近平氏(c)zixia/123RF.COM、ロシア・プーチン氏(c)timofeev/123RF.COM、北朝鮮・金正恩氏(c)primdiscovery/123RF.COM
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左から、中国・習近平氏(c)zixia/123RF.COM、ロシア・プーチン氏(c)timofeev/123RF.COM、北朝鮮・金正恩氏(c)primdiscovery/123RF.COM

最近、日本が「3正面脅威」に直面しているという言葉がよくメディアで聞かれる。これは中国や北朝鮮にロシアを加えた3カ国の脅威に、日本が同時多発的に直面していることを意味する。

近年、日本周辺の安全保障問題を考えた場合、海洋進出を進める中国や核ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に焦点が当たり、ロシアの動きを懸念する声は少なかったのが現実だ。しかし、ロシアがウクライナに侵攻して以降、欧米諸国と同じように日本もロシア政府高官への資産凍結や高級品目の輸出規制、ロシア人外交官の国外追放などを実施するなど、日露関係は冷戦後最悪レベルに関係が悪化している。

ロシア側も報復措置として日本人外交官を国外追放するなど、今後両国間では対抗措置の応酬が激しくなる可能性がある。最近、ドイツがロシア産原油を全面的に輸入禁止にする方針が明らかになったが、資源に乏しい日本も欧米と共同歩調を取る形で、ロシア産原油への依存を段階的に減らす形だ。

こういった事情もあり、ロシアは日本周辺で軍事活動を活発化させ、対立する日本や米国をけん制している。ロシア海軍は4月14日、ロシア極東沖の日本海でウクライナ侵攻の際にも使用した巡航ミサイル「カリブル」の発射実験を行い、3月30日には北方領土の国後島でロシア軍による軍事訓練が実施され、根室などでは地鳴りや地響きが起きたなどと訴える電話や通報が根室市役所に相次いだ。

こういったロシアの軍事活動が今後さらに活発化することになれば、正に今日言われる3正面脅威がもっと顕著になろう。北朝鮮は5月4日に今年13回目となるミサイル発射を行ったが、北朝鮮がロシアや中国の動向を注視しながら、今後も軍事的けん制を仕掛けてくることは間違いない。

そして、これによって懸念されるが、中国の出方だ。今後ロシアが日本北方における軍事活動が常態化した場合、それによって中国が日本南方で海洋覇権をさらにエスカレートさせる恐れがある。最近、中国は南太平洋のソロモン諸島と安全保障協定に締結し、今後は同協定に基づいて、現地で一帯一路経済プロジェクトに従事する中国人の護衛や保護を目的に中国軍が派遣される可能性もある。これと連動性があるかは分からないが、中国が海洋強国を目指しギアをさらに上げることが懸念される。

既に、台湾ではこの懸念が数値として表れている。台湾の民間シンクタンク「台湾民意基金会」が3月に発表した世論調査結果によると、台湾有事に対して米軍が関与すると回答した人は34.5パーセントとなり、昨年10月の65パーセントから30.5パーセントも大幅に急落した。

台湾市民の間には米軍がウクライナに直接軍事関与しないことで、台湾有事の際にも米軍が関与しないことへの懸念が拡がっている。台湾政府も4月、中国による軍事侵攻に備えて民間防衛に関するハンドブックを初めて公表し、そこには有事の際に市民が身を守るためのガイドラインが記され、スマートフォンのアプリを使った防空壕の探し方、水や食料の補給方法、救急箱の準備方法、空襲警報の識別方法などが詳細に記述されている。また、台湾国防部は3月、中国軍の脅威が現実味を帯びてきているとして、軍事訓練義務の期間を現行の4カ月からさらに延長する可能性を示唆した。

このように、日本北方で軍事活動をエスカレートさせるロシア、それによって出方を探る中国、中国やロシアの動向を見ながら挑発を続ける北朝鮮、ウクライナ戦争によって懸念を強める台湾というように、日本周辺の安全保障環境はいっそう厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻は遠い日本周辺の安全保障にも大きな津波を与えようとしている。

◆治安太郎(ちあん・たろう) 国際情勢専門家。各国の政治や経済、社会事情に詳しい。各国の防衛、治安当局者と強いパイプを持ち、日々情報交換や情報共有を行い、対外発信として執筆活動を行う。

2022/5/11
 

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