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岸田文雄首相(提供・共同通信社)
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岸田文雄首相(提供・共同通信社)

今回の参議院選挙は、自民の勝利、立憲の後退、維新の躍進、新興政党の台頭といったことが特徴付けられます。それぞれにある背景や課題、今後の政治や外交の展望などについて、考えてみたいと思います。 

125議席(改選124、補選1)をめぐって争われた今回の参院選の結果は、以下の通りでした。

自民63(選挙区45、比例代表18)、公明13(選7、比6)、立憲民主7(選10、比7)維新12(選4、比8)、国民民主5(選2、比3)、共産4(選1、比3)、れいわ3(選1、比2)、社民1(比)、NHK党1(比)、参政1(比)、無所属5(選5)

■“自民の圧勝”は本当か?

参院選における与党勝利の背景には、岸田首相の「丁寧で柔軟な対応」「失点の少ない政権運営」が国民にマイナスのイメージを抱かせにくく、(「他に適当な選択肢がない」という消極的支持も含めて)高い支持率を維持してきていたこと、また、ウクライナ戦争や新型コロナパンデミック等の有事においては、一般的に安定や継続といったことが求められる傾向にあること、野党がまとまっていないことなど、様々な周辺状況に助けられている面もあると思います。 

結果について、“自民の圧勝”と言われますが、私はその表現に少し違和感を覚えます。確かに、獲得議席数は改選55議席から8増やしましたが、比例区での自民の得票率は、前回(2019年)より1%、前々回(2016年)より1.4%減らしています。

そして自民だけではなく、与野党問わず、以前からある既存政党はすべて、今回比例で得票率を減らしており(※)、その分が、維新と新興政党に流れているといえます。

個々の選挙区での各政党の得票率をつぶさに見ても、必ずしも自民への支持が急上昇しているということではなく、①各選挙区において、これまで自民と議席を争ってきた立民の後退が著しく、一方で、②比例で支持を増やしている維新や新興政党は、個別の選挙区では、候補者を立てていなかったり、あるいは、既存政党の票は奪うものの当選に届くほどの得票はしなかったりで、結果的に自民候補者の当選が増えたと考えられます。

つまり、「自民党が大躍進」というよりも、野党の現下の様々な状況が、与党に有利に作用した面が大きいといえます。

具体的に、改選議席の(候補者が同一であることが多い)2016年と今回で比較して、野党から与党に議席が変わった選挙区(北海道、岩手、福島、新潟、東京、山梨、三重、大分(宮城は、野党現職が自民に鞍替え出馬して当選したので、別扱いとします))の各政党の得票率を見てみると、自民の得票率が増えている選挙区も多い一方で、得票率に変化がない(北海道、東京)、あるいは、減少している(大分)にも関わらず、議席が立民・国民から自民に変わっている状況は、まさにこうした現象によります。

(※)2022年参院選  比例区の各政党得票率
自由民主党35.9%(2016)→35.4%(2019)→34.4%(2022)、公明党13.5%→13.1%→11.7%、立憲民主党22.9%(民進21.0%+生活1.9%)→15.8%→12.8%、維新:9.2%→9.8%→14.8%、共産10.7%→9.0%→6.8%、国民7.0%(2019)→6.0%(2022)、れいわ4.6%→4.4%、社民2.7%→2.1%→2.4%、N党2.0%→2.4%、参政3.3%、その他の政党合計1.1%

■野党の多党化が進む

立憲民主は、岩手、新潟、山梨(以上現職)、北海道、東京、三重(以上現職引退による新人)で、自民に議席を奪われ、選挙区で6議席を減らしました。比例では改選7議席(得票率12.8%)を維持しましたが、比例での「野党第1党」の座は、8議席を得た維新(同14.8%)に譲ることになりました。

維新は12議席(選挙区4、比例8)で、改選6議席から倍増しましたが、候補者を立てた20選挙区のうち当選したのは3選挙区のみ(大阪2、兵庫1、神奈川1)で、東京、愛知、京都等の選挙区では次点となり接戦に持ち込んだものの、国政政党としての全国的な広がりは思うようには進みませんでした。

国民民主は、選挙区・比例でそれぞれ1議席減らし、共産は、比例で2議席減らしました。

一方、れいわは、選挙区と比例で計3議席を獲得し、国政政党として伸張しました。比例で1人が当選した参政は、選挙区と比例ともに、同じくN党・社民は比例で、得票率が有効投票総数の2%以上となり、公職選挙法上の政党要件を満たす形となりました。

新興の政党は、独創的な街頭演説やネットを駆使した手法で、異色な扱いをされることもありますが、あくまでも「民意は民意」として尊重されるべきものであり、与野党問わず既存政党は、「なぜ自党への支持が広がらず、新興政党が台頭していくのか」を冷静かつ精緻に考える必要があると思います。「立民や共産ではなく、れいわが政権批判票の受け皿となり、また、参政には一部保守票が流れた」といった見方もあります。

最近の国会運営や今回の参院選を見ても、「一致団結して与党と対峙する」という旧来型の野党の姿は変貌し、それぞれのやり方で存在感を主張する「野党の多党化」が進んでいるわけですが、これは一方で、「政権交代可能な二大政党制(連立を含む)」から離れていくことでもあり、結果として、与党に有利な状況が続いていくことになります。

◆豊田 真由子 1974年生まれ、千葉県船橋市出身。東京大学法学部を卒業後、厚生労働省に入省。ハーバード大学大学院へ国費留学、理学修士号(公衆衛生学)を取得。 医療、介護、福祉、保育、戦没者援護等、幅広い政策立案を担当し、金融庁にも出向。2009年、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部一等書記官として、新型インフルエンザパンデミックにWHOとともに対処した。衆議院議員2期、文部科学大臣政務官、オリンピック・パラリンピック大臣政務官などを務めた。

2022/7/18
 

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