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「ゾウ舎」は2019年オープン。あえて勾配をつけた屋外放飼場はさまざまな角度から観察可能。屋内外ともに床材は砂です
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「ゾウ舎」は2019年オープン。あえて勾配をつけた屋外放飼場はさまざまな角度から観察可能。屋内外ともに床材は砂です

「動物を擬人化しない」「直接さわらない」…。動物園ではよくあることに待ったをかける内容も盛り込んだ「札幌市動物園条例」が6月、同市議会で可決、成立しました。その内容は「動物福祉」「生物多様性の保全」という動物園が担う役割と責任を示した上で、これに沿った動物飼育、環境教育に取り組んでいこうというものです。ニュースで報じられると、SNS上ではさまざまな反応が。「ようやく」「当然」という声もあれば、「なぜ条例が必要?」「何が変わるの」といった戸惑いも目立ちました。

動物園の現状、具体的な取り組み、目的とは何でしょうか。札幌市円山動物園・経営管理課の森山予志晃さん、飼育展示課の朝倉卓也さんに詳しく聞きました。

--条例で期待できることは?

「動物園の役割と責任を明確にし、動物の生態が見る人に正しく伝わるような展示、飼育を行い、環境保全への考え方を広め、動物園で感じたことが新たな行動のきっかけになるよう取り組んでいきます。トップが変わろうが、担当者が変わろうが、ぶれることのない『軸』となります」

--「ふれあい」や「擬人化」の部分が注目されました

「動物に直接触れる体験は、命の大切さを知る上で効果的で、当園でもモルモットの『ふれあい教室』は行っています。擬人化に関しても、動物の写真や絵に吹き出しで何か言わせる掲示はよくあるもので、小さな子どもさんには伝わりやすい方法であり、間違いのないことであれば良いけれども、誤解を生じさせる表現はやめようと考えています。市内にはほかにも生き物を飼育展示する施設があり、この部分を全てに適用すると営業の制限につながるので、これは当園の規定として定められたものです」

--動物への誤解とは?

「オランウータンが1頭だけで展示されていると、『さみしそうだね』と言われることがあります。本来、単独生活する動物ですからその生態を正確に伝えずに『そうだね』と答えたら、誤った情報になります。リスザルのエサやりを近くで見てもらうと、かわいいとかいろんな感想が聞かれますが、『飼ってみたい』とも。ペットにしたい、できるだろうと思われたとしたら、野生動物なのに誤解されて伝わった、ということです」

--エサやりやふれあいは楽しい体験になるのでは?

「動物に直接触ったりエサやり体験で得られることは何でしょう。触り心地やエサの食べ方を知ることはできるでしょうが、そこで満足しておしまいなのでは。動物の生態、暮らす環境まで関心を持ち、守らなくてはと考えることにまでつながるでしょうか。当園では、野生動物との共生や環境保全について考え、行動するきっかけになるような取り組みを考えていきます」

同園では2015年、不適切な飼育管理のためマレーグマを死なせる事故が起きています。この反省を契機にさまざまな改善が進められ、飼育管理体制や長期的な運営方針の見直しを行ってきました。人材に関しては特に重要ととらえ、飼育に従事する職員の専門性を高めるため、現在、正規職員はすべて「動物専門員」として勤務しています。

2018年のホッキョクグマ館、翌年のゾウ舎オープンなど、全国的にも話題となった大規模施設も整備してきました。現在建設中の新しいオランウータン館は、生息地の一つであるボルネオ島の熱帯雨林の環境を再現した中で、オランウータンの行動を観察。生物多様性の重要性を感じられる施設を目指しています。

動物園が見せるもの、伝えることが、正しく受け止められ、それが環境保全につながっていきます。

「アライグマやニホンザリガニの展示から外来種によって日本で起きている問題を知ることができます。本来の生態系を知り、守るために、動物園と市民が共に活動し、環境保全につながる取り組みが必要です。 『動物園=環境保全』という意識はまだまだ根付いていないと感じますが、動物園は、野生動物に関心を持つための『ハードルの低い入り口』であり、人の感性が育まれる場所です。日本では例のない動物園条例ができたことで、その役割と責任を果たすため、取り組むべきことの重要度、優先度を見極め、本来進むべき方向を目指すことができると考えています」

(まいどなニュース特約・茶良野 くま子)

2022/7/22
 

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