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噛まれないよう頭を押さえて
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噛まれないよう頭を押さえて

 鉄人爺さん、略して鉄爺。43年の会社生活を卒業し、「暇を持て余さない老後」をコンセプトに第二の人生にチャレンジする。里山、自転車、マラソン、旅にグルメに…。

 勢いよく生えた雑草の根元を左手で束にしてつかんだその時だった。薄暗い草葉の陰に、土でもなく草でもない、土色の毒々しい模様が見えた。ぞくっとして左手をすぐに引き、右手に持った鎌で草をそっとかき分けてみた。

 その日(7月9日)は丹波篠山で立ち上げられた里山活性化プロジェクト「ミチのムコウ」が主催する草刈りイベントに参加していた。春先にプロジェクトで田植えをした酒米「五百万石」の田んぼの畔に、6月には黒枝豆の苗を植えた。

 それから3週間、黒枝豆よりも背の高くなった雑草を取り除いてやる作業だった。

 開始前のミーティングで、リーダーの吉良佳晃さん(37)から参加者に「マムシが出ることがあるので、草むらに手を突っ込む前に、鎌で奥の様子を確認してください」を注意があったところだった。

 それを聞いていながら、山の中ならいざ知らず、田んぼの畔の水気をたっぷり含んだ泥の上にマムシがいるというイメージが湧かず、つい左手を先に草むらに突っ込んでしまった。

 さてどうしたものか。もちろん両手には軍手をはめてはいるが、とても手を出す気にはなれない。5メートルほど先にいた吉良さんに「マムシ、出ましたよ」と声をかけた。

 「え!?本当ですか?」。まさか注意を呼び掛けて間もなく、そのマムシが登場するとは吉良さんも想像していなかったに違いない。指で指す草むらの奥をのぞき込むと、鎌の先を使って息の根を止めた。

 43年間続いた会社生活が一区切りとなることが決まった今年の初め、ふとしたことから「ミチのムコウ」のスタートを知った。新しい暮らしが始まる。老後というにはまだ有り余っているエネルギーの使い道を考えていた矢先の遭遇だった。

 自分が生まれ、高校を卒業するまで暮らしたのも岡山県山間部のまさに里山。吉良さんたちが暮らす丹波篠山と同様の課題に直面している。何か自分の経験、体を使って役に立てることはないだろうか。そんな思いから連絡を取り、神戸から丹波篠山、車で70分ほどの道を折りに触れて行き来する。

 いきなりのマムシのお出迎え、それもよし。

 次の草刈りは8月初旬。「こんなにきれいに刈り取ったのを思い出せないくらいにまた草が伸びていますよ」と吉良さんが笑った。

▼里山活性化プロジェクト「ミチのムコウ」 https://michinomukou.org/

(まいどなニュース特約・沼田 伸彦)

2022/8/7
 

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