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徳川家康のイメージ ※画像はイメージです(Ide Satoshi/stock.adobe.com)
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徳川家康のイメージ ※画像はイメージです(Ide Satoshi/stock.adobe.com)

2023年のNHK大河ドラマ「どうする家康」で、主人公徳川家康を演じる松本潤。この「松本」という名字は全国ランキング16位というメジャーな名字である。由来は文字通り「松」の「もと=下」に家があったことだが、どうしてこれほど多いのだろうか。

名字とはそもそも家と家を区別するために生まれたもので、本来は地名や地形で特定した。しかし、人口が多く人口密度の高い日本では、同じ地名や地形の場所にもたくさんの家があるため、それ以外のもので区別する必要があった。

その場合、特定の家を指すときには近くにある目立つもので表現すればいい。当時の家はほぼ平屋。家の近くに高い木が生えていれば、「その木の下の家」ということで家を特定できた。松の木があれば松本さんや松下さん、栗の木があれば栗本さんという具合である。

今でも農村部では山の麓に1本の道が走り、その脇に家が建てられていることが多い。そうした場合は山に生えている木でも区別できた。山の松の木の下に住んでいる人が松本さんである。

現代人は、木を見てマツ、スギ、サクラくらいは区別できても、クリ、ナラ、カシワなどを区別できる人は少ない。しかし、昔の人は当たり前のように見分けることができたため、色々な木の名前が名字として使われた。

こうした木にちなむ名字はたくさんあるが、その中でも「松」が圧倒的に多い。全国ランキング16位の「松本」を筆頭に、「松田」「松井」「松尾」と100位以内に4名字。以下、「小松」「松岡」「松下」「松浦」「松村」「松原」「松永」「松崎」「村松」「松山」「松島」「平松」「高松」「松沢」「松野」と500位までに19名字も入っている。

「松」に次いで2番目に多い「杉」でも、「杉山」「杉本」「杉浦」「杉田」「杉原」の5つしか入っていないことから、「松」の圧倒的な多さがわかる。

ブナやナラなどの落葉広葉樹は冬になると葉を落とす。そうした中、マツは冬になっても葉を落とさないことから、長寿を象徴する木ともされ、門松などに使われる。また、松には「聖なる木」という意味合いもあり、「松竹梅」という言葉では筆頭とされるなど、木の中でも特別な意味を持っていた。

名字には縁起のいいものを使うというのが基本のため、「松」という言葉を使用することが多かったと思われる。

◆森岡 浩 姓氏研究家。1961年高知県生まれ。早稲田大学政経学部卒。学生時代から独学で名字を研究、文献だけにとらわれず、地名学、民俗学などを幅広く取り入れながら、実証的な研究を続ける。NHK「日本人のおなまえっ!」にコメンテーターとして出演中。著書は「47都道府県名字百科」「全国名字大事典」「日本名門名家大事典」など多数。

2022/12/24
 

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