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ごのくにのかたち

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 神輿(みこし)をぶつけ合う。豪華絢爛(けんらん)な7台の屋台が練る。太鼓の音色と威勢のいい播州弁が漁師町に響く。

 10月14、15の両日で十数万人を集める松原八幡神社(兵庫県姫路市)の「灘のけんか祭り」。運営を担う旧灘七ケ村の一つで、今年の「年番」を務める妻鹿(めが)地区の総代篠原大典(だいすけ)さん(77)は「全ての予定が祭りを中心に回っている」と笑うが、決して誇張ではない。

 郷土意識が強いとされる播磨。当の「播州人(ばんしゅうじん)」には、祭りよりも身近に感じるものがあるらしい。神戸新聞社は昨年12月、播磨出身、在住の335人にアンケートをした。「どんなときに播州人と感じるか」の設問で、「祭り」の46人を大きく上回ったのが、164人の「言葉遣い」だった。

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 播州弁は短く、濁音が目立つ。「ゴウワク(腹が立つ)」に「ダボ(あほ)」、語尾の「ドイヤ」「ガイヤ」「ケー」…。波音に負けない、強く端的な表現が必要な漁師町特有の事情が播州弁を生んだという。

 アンケートでは、その語感を「温かい」(姫路市、40代女性)と評価する意見もあったが、否定的な声が相次いだ。兵庫県稲美町出身の40代女性は「小学生のときに『日本で一番汚い方言』と教えられて誇りを持てなくなった」と話す。

 「播州人のイメージ」を4択で選ぶ問いでも「言葉が悪い、柄が悪い、気が荒い」が172人と、唯一半数を超えた。1970年代に本紙が実施した同様の調査(対象300人)では、言葉や気性の荒さを選んだのは42人にとどまった。

 一方、前回最も多かった「温和、人情深い、おおらか」(約60人)は、今回2番手の120人。40年ほどの間に印象の濃淡が入れ替わった形だが、篠原さんの受け止めは異なる。「播州弁は確かに荒い。でもね、根っこにあるのは播州人の人情深さ。上品にしゃべって相手に伝わらんよりは、よっぽど親切でしょ?」

 相反するイメージが混在する、播磨独特の風土性をそう表現するのだ。

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 「『兵庫の県民性は』と聞かれても、答えようがない」。昨年末、県政150年を前に開かれた県議会の会合で、園田学園女子大名誉教授の田辺眞人(まこと)さん(70)=地域史=が断言した。

 一つの具体例を挙げた。大阪の象徴に岸和田のだんじりの写真を使っても問題はないが、兵庫ではそうはいかない。灘のけんか祭りを出せば、他の地域から「なぜ、うちの祭りではないのか」との不満が出る-。

 「独立運動」もあった。明治政府が強引に決めた兵庫県への合併に反旗を翻した1880年代の「飾磨県再興運動」だ。数年で収束したが、播磨が独立県としての歴史も実力も持ち合わせていたことを伝える。

 田辺さんは、よそへの反発は、地元への愛着の裏返しだと感じている。「一つになりづらいのは、それだけ際だった個性が息づいているということ。個性がないとまとまりやすいが、しょせんは烏合(うごう)の衆。ちっとも面白くありません」

(金 慶順、小川 晶)

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