連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

ごのくにのかたち

  • 印刷
県政150周年記念事業のロゴが彩るカウントダウンボード=神戸市中央区(撮影・吉田敦史)
県政150周年記念事業のロゴが彩るカウントダウンボード=神戸市中央区(撮影・吉田敦史)

 「こんなもん残っとるのうちのムラくらい違うか。もうどっこもせえへんで」

 丹波黒大豆の発祥の地、篠山市の川北地区。新穀感謝祭にあたる12月15日の「講当(こうどう)」で、宮参りを出迎えながら、当番の北川喜代治さん(83)が言う。

 盛り米や団子のお供え、鬼の面や魚の絵の飾り物を用意して、神事の後の宴会には升形に抜いた小豆飯の「もっそう」と餅のお膳を整える。「昔はおにぎりや煮しめもこしらえてな、夜までやりよったんやで」。今では小一時間の歓談後、お札をいただき解散する。

 農家を中心に住民の入れ替わりが少ないからこそ、簡素化されながらも続いてきた。しかし、こうした行事や祭りには途絶えたものも少なくない。

 二つの海に面する「雄県(ゆうけん)」兵庫。その人の流れは、北から南への“一方通行”の色が濃い。

 「人口流出と少子高齢化。続けられなくなる一番の要因はそれやろね」と県内の民俗芸能を長年調査してきた久下(くげ)隆史さん(68)=同市。暮らしに密着した民俗の変化は、社会構造の変化の映し鏡に他ならない。

     □  □

 広大な兵庫県域は、国際貿易港・神戸を有するに見合うよう設計されたとされる。南北の交通路も早くから意識され、幹線道路の整備が営々と続く。阪神・播磨の発展を支え、丹波・但馬・淡路の後進地域に成長力を波及させるためだと、「兵庫県百年史」はいう。

 だが、今必要とされているのは、地域間の“交流”の役割だ。

 「旧五国といっても一つの枠に収まってないのは、文化からでも分かります」と久下さんは言う。

 丹波では、篠山の旧街道筋に京都系の鉾山(ほこやま)があり、加古川筋で播磨とつながる旧氷上郡(丹波市)に播磨型の太鼓神輿(みこし)がある。但馬西部の麒麟(きりん)獅子舞や菖蒲(しょうぶ)綱引きは鳥取・因幡の系統だ。淡路の人形浄瑠璃は東北や九州へ広がり、神踊りの歌詞には関東と同一のものがあるという。

 五国がそれぞれ異なる自然環境を内包し、国境(くにざかい)で外と接する。人と物とが行き交う中から、豊かな産物も多様な文化も、複雑な気質も醸成されてきた。

 五国という過去からの贈り物を見直し、人を呼び込む地域主導の流れが生まれてきたのは、比較的最近のことだ。

     □  □

 雄県から「結(ゆ)う」県へ。

 規模や力を誇るよりも、五国を「結う」こと。統合より、多彩な地域のカラーのままに、兵庫という模様を織り成すことが、150周年を迎える県の未来図に見える。

 仕事始めの1月4日。県庁では県誕生の7月12日までの時を、カウントダウンボードが刻み始めた。ロゴの5色に並び立つラインは県土を結ぶ道にも見える。青一色に「兵」の字を表す県旗とは趣の違う、「五国」のかたちが見えてくる。

 「地域の特性が持続しているのが兵庫県の特色。その特色をさらに生きさせるような活動を」。井戸敏三知事も年頭あいさつの言葉に力を込める。

 現在(いま)と歴史が交わる風土の上に、「ごのくに」の未来はある。(田中真治)=おわり=

天気(2月23日)

  • 10℃
  • 3℃
  • 10%

  • 11℃
  • -2℃
  • 40%

  • 11℃
  • 3℃
  • 10%

  • 13℃
  • 1℃
  • 10%

お知らせ