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 神戸市に住む阪神・淡路大震災の被災者二百人を対象に、共同通信社が地震への備えや生活状況などを聞いたアンケートで、90%(百八十人)が何らかの防災対策を取っていると回答。内閣府が二〇〇五年に全国の三千人を対象に行った世論調査では69%にとどまっており、被災者が高い防災意識を保っていることを裏付けた。

 一方、生活状況について被災者の34%(六十九人)が「回復していない」と回答、このうち四十四人が「収入など経済的状況」を挙げた。震災から十七日で十二年。今も経済的苦境に立たされている被災者の現実も浮き彫りになった。

 アンケートは昨年十二月実施。被災者向けの公営賃貸住宅(復興住宅)と、被災後に再建した民間マンションを戸別訪問し、それぞれ百人に達するまで一世帯につき一人ずつ回答を集めた。

 地震防災については、内閣府の世論調査と対比できるよう同じ質問項目を加えた。地震対策として多かった回答(複数回答可)は(1)携帯ラジオや医薬品を準備(72%)(2)避難場所を決めている(55%)(3)食料や飲料水を準備(52%)などだったが、世論調査ではそれぞれ(1)49%、(2)28%、(3)25%で、いずれも被災者の方が大きく上回った。

 食料や飲料水を備蓄している被災者のうち60%が消費期限を定期的に点検し補充していることも判明。世論調査では「地震対策を特に何もしていない」が29%あったが、アンケート回答者でも10%あった。

 一方、再建した民間マンションに住むため震災後に新たに住宅ローンを抱えた人は58%。震災前に住んでいた住宅と、震災後に入居した住宅との「二重ローン」になった人は22%だった。

 神戸市が主導して実施した「市街地の区画整理事業」は68%が評価したが、21%が評価しないと回答。道路や広場など防災用の公共スペースを生み出すため地権者が少しずつ土地を提供した「減歩」などへの反発も依然根強いとみられる。

取り組み方に温度差 風化懸念
 阪神・淡路大震災の被災者へのアンケートで、地震直後に必要な携帯ラジオや医薬品を家に置くなど、被災者が災害の再来を意識し、備えを進めている姿が浮かび上がった。一方で、「面倒くさい」などの理由で地震対策を何もしていない世帯が10%あり、項目別の防災対策では取り組み方に温度差も出た。「震災経験の風化が静かに広がり始めているのかもしれない」(消防庁消防研究センターの室崎益輝所長)との懸念も出ている。

 震災では家屋の倒壊などによる圧死が地震直後の死因の約87%を占め、耐震改修や家具の転倒防止の必要性が叫ばれた。アンケートでは90%が「何らかの防災対策」は取っていた。しかし項目別にみると「家具の転倒防止策を取っていない」世帯が69%(百三十八人)に上った。理由を問うと二十五人が「面倒くさい」、二十四人は「大地震の時には効果がない」の選択肢を選んだ。

 また水と食料の備蓄に関する設問では、非常時に必要とされる三日分以上を備えていたのは28%で、34%は水も食料も全く準備していなかった。

 東京女子大の広瀬弘忠教授(災害心理学)は「もっと取り組みを促す必要がある」と指摘、被災者のあきらめとも取れる態度を心配する。

 地震や水害などに備え避難場所などを明示し、神戸市が各世帯に配った「防災マップ」は、74%が「見たことがある」と回答。しかし、マップの「保管場所を把握している」は37%だった。

2007/1/14
 

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