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(3)共同店舗 市場の魅力着目し再生
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 打ち解けたやりとりに場が和んだ。「きょうは、何が安いのん」「これがお薦めやで」。神戸市須磨区月見山本町2の共同店舗「ジョイエール月見山」。常連客と店員の会話が弾む。

 共同店舗とは、個別の店ごとに商品を並べ、お客は商品をレジに持ち込み代金を払う-というスーパー方式の市場のことだ。

 震災前、同市南部には計80団体約2000店の市場があった。が、45%の店が全壊、全焼。被災前から大型店との競合に苦戦していた市場は、共同店舗化に活路を求めた。行政の勧めで県内10団体が導入した。

 「共同店舗には市場時代の常連さんがついている。販促のノウハウを身に付けてなかった分、大手スーパーに比べ伸びしろもある」

 「派遣店長」として、行き詰まった共同店舗を再生させた経験を持つジョイエール月見山の営業部長福島孝さん(46)は確信を持つ。

 ジョイエールの前身「月見山公設市場」は全壊し、市から借りていた土地を買い取り共同店舗を建てた。国の「災害復旧高度化事業」の第1号に認定され、総事業費約3億円のうち、国と県から約1億8000万円の無利子融資を受けた。

 「生き残るにはこの方法しかなかった」と、ジョイエールを運営する協同組合の代表理事〓田修さん(59)。だが、「高齢のため借金できない」などの理由で、参加者は市場の個店経営者16人中5人にとどまった。

 震災翌年の4月に開業し当初の4、5年は好調だった。しかし、復興が進むに連れ周囲に大型店が増え、売り上げは徐々に減っていった。売り場面積が約470平方メートルと狭く、品ぞろえでは太刀打ちできない。多額の融資返済も経営者を苦しめ、2006年にはさらに2人が撤退した。

 各地の共同店舗で今、自己破産する個店経営者が相次ぐ。市内の別の共同店舗で残る1人となった店主は「共同化で、各個店の経営者としての意識が薄まった」と指摘。空き区画は賃貸の業者で埋めるが、共同店舗全体の意思決定が難しい。「行政が中長期的ビジョンを持たず、共同店舗化を進めた」との批判もある。

 ジョイエールの協同組合が経営再生に向けて、白羽の矢を立てたのが、福島さんだった。店長を務めていた同市長田区の共同店舗で、世代交代や撤退した経営者の呼び戻しなどを進め、1年半で約2割の売り上げ増を実現させていた。

 昨年10月に着任した福島さんは、各店の店頭広告を統一したり、商品を立体的に並べたりと、スーパーの販促方法を取り入れた。同時に顔の見える接客を重視。要望に合わせて商品を仕入れたり、料理方法を提案したりする市場時代の売り方も復活させた。結果、1年もたたずに売り上げは3割伸びた。

 福島さんのやり方に気づかされたことが多いという〓田さん。「地域の人に愛される店であり続けたい。そのために市場経営者として原点に立ち返りたい」と話す。(貝原加奈)

(注)〓は「吉」の異体字。「士」が「土」

2009/10/2
 

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