1995年1月17日未明に起きた阪神・淡路大震災。神戸新聞は神戸・三宮の本社が全壊したが、京都新聞の協力で休まず発行を続けた。当時、現場にいた記者たちの目を通して震災を描くフジテレビ・関西テレビのドキュメンタリードラマ「神戸新聞の7日間 命と向き合った被災記者たちの闘い」が、2010年1月16日午後9時から放送される。
15年前のあのとき、記者たちは何を見、何を思ったのか-。
震度7という未曾有の震災で記者たちが直面したのは、屋根の落ちた家屋、がれきに埋もれた人々、手のつけられない火災など、言葉に尽くせない惨状だった。
ドラマに登場する写真部記者らは葛藤(かっとう)を重ねる。遺体を捜す人の写真を撮ることにどんな意味が-。逆に別の記者は救出の手伝いをしていて、被災者から取材をしてほしいと促された。
カメラマンたちは思い悩む。だが、大切な友人の死を知り、遺族の悲しみや被災者の苦悩に寄り添いながら、震災と向き合うようになっていく。
大震災から15年という節目の年に、非常時の人のきずなや愛を描き、記憶の風化を防ぐのが企画意図という。8月に制作が決まり、ドラマ部分は10月中旬から11月初旬にかけて撮影した。
原案は神戸新聞社員らの姿をつづった「神戸新聞の100日」(角川ソフィア文庫)。番組スタッフは現役の記者やOB、被災者ら約70人を取材。この証言をドラマの中で紹介するほか、ストーリーを新たに構築する際の資料とした。
例えば、新聞販売店の店主ががれきに埋まった状態にもかかわらず、「父ならきっとこうします」と息子が新聞を配る場面。読者からの激励の手紙を編集局長が記者たちに読んで伝える場面。これらは証言内容を加え、細部まで描き込んだ。
「記者魂や使命感だけでなく、災害という究極の状況下での、人間の本質を掘り下げるドラマに仕上げられた」。フジテレビ編成部主任の立松嗣章(ひであき)さん(42)は話す。
主役はアイドルグループ「嵐」の櫻井翔。「伝えるとは何か、前を向くとはどういうことか、感じてほしい」と語る。
取材に奮闘した記者たちは、自分たちも傷ついた被災者だった。ドラマは、あらためて震災について語り、考えることの大切さを呼び掛ける。(文化生活部・吹田 仲)
2010/1/1