毛筆で書き上げる。歯を食いしばり、一気に＝神戸市中央区元町通６
毛筆で書き上げる。歯を食いしばり、一気に＝神戸市中央区元町通６
徹夜の仕事を終え、神戸市中央区のアトリエを出た途端、激しい揺れに襲われた。「何が起こったのか、まったく理解できなかった」
あの朝以来、暮らしは一変した。同市長田区の自宅は半壊。家族と一緒に県立長田高校で避難生活を送った。札幌ナンバーの給水車から水をもらい、ボランティアに１週間ぶりの温かい豚汁をごちそうになった。
「絵で何かできないか」との思いにかき立てられ、地震から約２カ月後、神戸・元町商店街でライブペインティングをした。倒壊した店舗を囲ったパネルに作品を描いた。「出発」の意味を込めた「種」を持つ人に、「見えへんところにもおりまっせ 友だちがいてよかった」の言葉を添えた。
右手でハートを掲げ、大きな足で踏ん張るキャラクター「ガッツ君」も創作した。「心まで地震につぶさせへん。力強く生きるんや」という思いを込めた。自分や家族、知人が犠牲になっていたら、元気な絵は描けなかったとも思う。
支え合い、生き抜くことを最優先に考えるようになった。「いろんなところで人はつながっている。命ある限り、経験して感じたことを作品にしていきたい。そして、しっかり生き抜きたい」（斎藤雅志）
2011/1/12
