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研修で「統括保健師」の役割について意見交換する兵庫県内市町の保健師=神戸市中央区(撮影・三浦拓也)
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研修で「統括保健師」の役割について意見交換する兵庫県内市町の保健師=神戸市中央区(撮影・三浦拓也)

研修で「統括保健師」の役割について意見交換する兵庫県内市町の保健師=神戸市中央区(撮影・三浦拓也)

研修で「統括保健師」の役割について意見交換する兵庫県内市町の保健師=神戸市中央区(撮影・三浦拓也)

 今年8月、土砂災害に見舞われた広島市。発生2日後の夜、広島県や同市の医師、看護師らで組織する「災害派遣精神医療チーム(DPAT)」が被災地に入った。

 東日本大震災を教訓に昨年4月、厚生労働省が各都道府県に整備を呼び掛けたチームだ。平時から一組数人の班を複数登録し、災害時に被災者の心のケアを担う。実際の活動は、このときが全国で初めてだった。

 活動初日は、3班が避難所に向かった。同市精神保健福祉センター所長の精神科医、皆川英明(50)らが安佐北区の市立梅林小に入ると、早速、「話を聞いてほしい」という避難者がいた。ショックが明らかな様子に、皆川は「災害時、それは正常な反応です」と伝え、安心するよう促した。

 派遣は11月まで続き、DPATは101人の相談を受けた。

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 阪神・淡路大震災後、数々の災害を経て、精神医療班の派遣体制は整備されてきた。しかし、東日本大震災でも、調整に手間取って適切な派遣時期を逃したり、情報不足で派遣が特定の避難所に集中したりした。

 厚労省が打ち出した新たな仕組みは、災害のたびにチームを編成する従来の方式を改め、都道府県が複数のDPATを準備しておくことで派遣をスムーズにする。活動要領で組織の位置付けも示し、地元自治体の災害対策本部との連携を明記した。

 ただ、今後の災害で実際に機能するかは未知数だ。広島県健康対策課は「今回は広島市内だったので円滑に対応できたが、遠方に派遣する場合、現地でうまく対応できるかは大きな課題」とする。DPATの真価は、巨大災害でこそ問われる。

 兵庫県は19日、県精神科病院協会や5病院と協定を結び、DPAT計46班の派遣体制を整えた。派遣先の自治体などとの連携強化のため、各班に公的機関の職員を組み込んだのが特長だ。

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 広島市の土砂災害では、DPATが到着する前に、市の保健師が避難所の住民の健康チェックを済ませていた。避難所巡回や訪問活動で被災者に接する保健師は、心のケアの最前線に立つ。

 兵庫県は3月、災害時の保健師活動ガイドラインを改定した。発生直後から復興期にわたる保健師の主要活動として心のケアを位置付け、「被災者のところに出向き、相談しやすい体制をつくることが大切」などの心構えを示した。

 だが、主体となる市町は体制整備の途上だ。DPATなどとの連携で鍵となる「統括保健師」の仕組みを導入しているのは県内では姫路、豊岡市など8市町のみ。県が策定を求める災害時の保健師活動マニュアル整備も、昨年度の時点で13市町にとどまる。

 県健康増進課は「平時の活動の延長に災害時がある。災害時を意識して動くことが、平時の活動の質も高める」と市町の体制整備を促す。

=敬称略=

(森本尚樹)

2014/12/20
 

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