連載・特集 連載・特集 プレミアムボックス

消えない借金

  • 印刷
クリーニング店を営む女性宅にこれまで届いた請求書の束=神戸市兵庫区(撮影・中西幸大)
拡大

クリーニング店を営む女性宅にこれまで届いた請求書の束=神戸市兵庫区(撮影・中西幸大)

クリーニング店を営む女性宅にこれまで届いた請求書の束=神戸市兵庫区(撮影・中西幸大)

クリーニング店を営む女性宅にこれまで届いた請求書の束=神戸市兵庫区(撮影・中西幸大)

 もう何回、こんな電話をかけただろう。

 「年金が入る来月まで待ってください」

 神戸市須磨区と兵庫区で夫とクリーニング店を営む田中節子(78)=仮名=は阪神・淡路大震災以降、複数の借金返済に追われる。

 市から借りた災害援護資金のほか、銀行から融資を受けた店の改修費、全壊した自宅の再建費…。まだ1千万円以上残っている。

 震災まで、商売は順調だった。夫婦と弟の和夫(64)=仮名=の3人で夜遅くまで働き、年間収入は1400万円程度。直前には2千万円の融資を受け、クリーニングの機械を新しくしたばかりだった。

 災害援護資金の250万円を含め、当時、背負った借金は合計4050万円。それでも、以前のように仕事ができれば、十分に返せたはずだった。

 ところが、売り上げは1桁落ちた。「みんな収入が減り、できるだけ家で洗うようになった」。お得意さんが散り散りになったのも痛い。和夫には給料を渡せなくなった。

 現在の売り上げは年300万~400万円。国民年金は月約10万円。そこから、災害援護資金など諸々の借金返済額8万6千円を捻出する。店舗の賃料や自宅の借地代、車のローンもある。

 外食することもなく、服も買わない。「貧しい戦後を生きてきたから、どんな生活でも耐えられる」と節子。「だけど、お金を返していくのは本当に大変」

    ◇

 震災発生の1995年から2003年まで、兵庫県内の破産件数は過去最悪を更新し続けた。災害援護資金などの返済が始まったことも影響したといわれている。

 多重債務問題に詳しい弁護士の辰巳裕規は「災害援護資金だけで自己破産に至るケースはほとんどない。多くは事業がうまくいかなかったり、二重ローンを抱えたりして苦しんでいる」と指摘する。

 収入が途絶えた和夫の家庭は崩壊した。子ども3人は大学をあきらめ、和夫は妻と離婚。自宅のローンを抱え込んだ。未明に新聞配達、昼に警備員をし、合間に節子らの店を手伝う。

 節子が借りた災害援護資金の連帯保証人は、和夫だ。節子らが仕事をやめて返済できなくなれば、和夫にさらに負担がいく。

 「夫とは『90歳を過ぎても働こう』と言っているの」。節子は笑ってみせたが、声が震えた。

 「でもね、どこで倒れて終わるか分からない」=敬称略=(高田康夫)

2014/12/24

天気(1月26日)

  • 15℃
  • 7℃
  • 80%

  • 15℃
  • 1℃
  • 80%

  • 16℃
  • 6℃
  • 70%

  • 15℃
  • 5℃
  • 80%

お知らせ