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消えない借金

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災害援護資金の滞納で、尼崎市から訴えられた男性。神戸地裁尼崎支部は「市敗訴」の判決を出した=尼崎市水堂町3
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災害援護資金の滞納で、尼崎市から訴えられた男性。神戸地裁尼崎支部は「市敗訴」の判決を出した=尼崎市水堂町3

災害援護資金の滞納で、尼崎市から訴えられた男性。神戸地裁尼崎支部は「市敗訴」の判決を出した=尼崎市水堂町3

災害援護資金の滞納で、尼崎市から訴えられた男性。神戸地裁尼崎支部は「市敗訴」の判決を出した=尼崎市水堂町3

 「被告の過失を認めることはできない」

 阪神・淡路大震災から15年を目前にした2009年12月、神戸地裁尼崎支部は異例の判決を出した。災害援護資金の返済を求めた尼崎市の訴えを退けたのだ。

 同市に住む山本哲也(50)=仮名=は、市から援護資金170万円を借りた女性の連帯保証人になっていた。一緒に居酒屋を開くのが夢だった。

 だが、震災2年後、交通事故で骨盤を折り、働けなくなった。06年に自己破産。女性とはいつしか疎遠になっていた。

 女性は返済が滞り、同市は08年、保証人である山本に請求した。裁判所は「災害援護資金であること、債権者が地方公共団体であることを考慮した」と判決で述べている。

 山本の代理人を務めた弁護士の津久井進(45)は「(山本は)保証人になったことを忘れて手続きをしておらず、銀行なら免責されない場合もある。自治体が被災者に貸すという制度の特質から、行政には厳しいとも言える判断になったのだろう」と指摘する。

 尼崎市は控訴しなかった。山本のケースは誰からも回収できない。そうした「徴収不可能」な未返済は9月末時点、尼崎市で約8400万円、兵庫県内で約19億2300万円ある。徴収できなければ、市町村が肩代わりして国に返さなければならない。

 たとえ裁判に勝っても、徴収は思うように進まない。尼崎市は嘱託や非正規を含め職員8人が徴収業務に当たっている。担当者は「1万円払ってもらうのに、どれだけ費用がかかるか。説明しても国には全く届いていない」とこぼす。

     □

 震災当時、貸し付けを担当していた神戸市の元職員(61)は「当初から、制度は被災の現状と合わないことが多かった」と明かす。

 同一市内在住しか認めない保証人要件や、発災後3カ月までの申し込みは、阪神・淡路の特例で改められた。少額償還や返済期限の延長も認められたが、無利子化などの要望は「前例がない」と国に退けられた。

 元職員は業務の中で「8割は返ってくる。2割は難しい」と直感したという。9月末で87・6%の金額が返済されたが、それでも残る未返済は155億円。巨額だ。

 元職員は、震災3年後から、新たな制度として最高100万円が支給された「被災者自立支援金」の事務に携わった。その上でつくづく思う。

 「やはり、給付型の支援制度が必要だった」

=敬称略=

(高田康夫)

2014/12/27

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