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消えない借金

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「総合的な公的支援制度をつくることが必要」と語る神戸大の地主敏樹教授=神戸市灘区
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「総合的な公的支援制度をつくることが必要」と語る神戸大の地主敏樹教授=神戸市灘区

「総合的な公的支援制度をつくることが必要」と語る神戸大の地主敏樹教授=神戸市灘区

「総合的な公的支援制度をつくることが必要」と語る神戸大の地主敏樹教授=神戸市灘区

 今年8月、兵庫県庁。県内10市の職員が集まった。全員が、阪神・淡路大震災の被災者に生活資金を貸し付けた「災害援護資金」の担当者だ。

 「子どもや親類に借金がいかないか、心配しながら亡くなっていく。そんなお年寄りの肩の荷を下ろしたってくれ」

 西宮市の担当者が切々と訴えた。目の前に内閣府の職員がいた。

 東日本大震災では、支払期限から10年たっても、借りた被災者が「無資力状態」であれば免除する特例が設けられた。阪神・淡路でも同様の要件を検討する方針が示された。

 ただ、「無資力状態」の線引きは決まっていない。そのため内閣府は、阪神・淡路の実態を調べに来ていた。地元市からの“直訴”に、職員は「持ち帰ります」と答えるにとどまった。

 神戸大学経済学部教授の地主敏樹は「まだ未返済の回収を続けているのか」と驚く。「金融機関なら損失として処理している」

 阪神・淡路10年に兵庫県が行った検証事業で災害援護資金を担当。「まとまった額の公的資金を入手できた最初かつ当面唯一のプログラムだった」と評価する一方、中・低所得者向けの貸し付けで不良債権化しやすく、損失をすべて被災自治体が負担している問題点を指摘した。

 他の支援策がさみだれ式につくられたことについても、「つぎはぎ的で、被災者が将来の生活再建計画を立てにくい」と論じた。

 その後、被災者生活再建支援法はできたが、地主は「公的な貸し付けと給付を合わせた総合的な支援制度が望ましい」と主張する。

    ◇

 「いくらお金を費やして建物や道路をつくっても、全体的復興につながらない。市民の生活が再建されて初めて、真の意味の復興が成立する」

 公的支援を求めた作家の小田実(故人)は1998年、参院災害特別委員会の参考人として、そう述べた。

 阪神・淡路で実施された復興事業の総額は約16兆3千億円。うち10兆円近くがインフラ復旧や市街地整備に使われ、街には傷痕が見えなくなった。

 一方で、生活の立て直しのために借りた金に、20年近くたっても苦しむ人がいる。

 南海トラフ巨大地震や首都直下地震が起きれば、膨大な規模の被災者が生まれる。このままではまた、「つぎはぎ支援」が繰り返される。

 一人一人の暮らしを再建するために、どのような支援策が必要なのか。阪神・淡路を経験した私たちが、次の被災者に問われている。

=敬称略=

(高田康夫)

=おわり=

2014/12/29

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