
天下三分の宣言書。須磨の自宅で出勤前にしたためたとも書いている=神戸市中央区京町、市立博物館(撮影・田中靖浩)
それは長さ6・16メートルになる。躍るような草書体。筆を執ったのは鈴木商店の番頭金子直吉である。約100年前、鈴木の絶頂期にロンドン支店長の高畑誠一らに宛て一気にしたためた。「三井三菱を圧倒する乎(か)、然(しか)らざるも彼等と並んで天下を三分する乎、是(これ)鈴木商店全員の理想とする所也(なり)」
財閥への対抗意識がほとばしる檄文(げきぶん)が後半部分に登場する。高畑は後に「社員は魔術にでもかかったように勇気づけられて突撃した」と述懐した。鈴木関係者が「天下三分の宣言書」と呼び、宝物とする手紙は神戸市立博物館(神戸市中央区)に寄託されている。天下三分のくだりが注目されがちだが、金子の真骨頂は前半にある。そこには、鈴木商店を猛スピードで成長させた大番頭の「秘策」が記されている。
この記事は会員限定です。新聞購読者は会員登録だけで続きをお読みいただけます。