
「かね辰」のマークが目を引く鈴木薄荷の製品=神戸市灘区下河原通1(撮影・田中靖浩)
小瓶の中は半透明のハッカが詰まっている。ラベルには、鈴木商店の屋号「かね辰(たつ)」のマークと、赤いダイヤ形に白字で「SUZUKI」とある。製造するのは鈴木薄荷(はっか)(神戸市灘区)。「鈴木」の名と屋号を継ぐ唯一の企業だ。1927(昭和2)年、鈴木の破綻から3カ月後に創業した。ラベルは当時から変わらない。歯磨き粉や虫よけ剤などハッカの用途は幅広い。現在、全国の約4割のシェアを持つ。事業をたどっていくと、神戸港開港後の居留地に行き着く。
鈴木の番頭金子直吉が、外国商相手に売り込んだ。国産品の需要の高さに目を付け、02(明治35)年には、神戸市の雲井通に工場を建設。一時は全国の5割を扱っていた。金子は居留地で外国商からさまざまな商売のヒントを得た。一方で屈辱も味わった。(田中宏樹)
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