ちょうど100年前の流行語に「サボタージュ」がある。1919(大正8)年、神戸の川崎造船所で従業員の起こした賃上げ争議が「サボタージュ闘争」と呼ばれ、広まったとされる◆「ずるけてサボるんでねえんだ」とは小林多喜二「蟹工船」にみえるせりふだが、名詞の末尾に「る」をつけて動詞とする例は古くからあるらしい。江戸時代には「料(りょう)る」(料理をする)という新語も生まれた◆「サボる」がすっかり日常語として定着する一方、「料る」は近年あまり耳にしない。令和最初の年のはやり言葉は100年先、どうなっていることやら。きのう、2019年の新語・流行語大賞が発表された◆もしも「タピる」が大賞になっていたら、これも「タピオカ」に「る」で…と話を続けやすかったのに、惜しくも違った。大賞は、ラグビー日本代表の結束を表した「ONE TEAM(ワンチーム)」である◆組織を束ねる立場にある人などには使い勝手のいい、汎用(はんよう)性に優れた言葉なのだろう。「ここは一つ、ワンチームでいこう」とか何とか。とはいっても誰でも使ってサマになるかといえば、そうでもなさそうな◆流行語をおずおずと口にするころには、たいてい古びていたりする。使うなら「今でしょ!」。古すぎる。2019・12・3
