正平調

時計2020/06/08

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一幅の絵から人生が立ちのぼった。2日に再開した姫路市立美術館で初展示中の「残秋」。大正・戦前に活躍し、姫路で没した日本画家粥川伸二(かゆかわしんじ)が描いた。同館が所蔵する、唯一の粥川作品でもある◆縮れたモミジの落葉が3枚。傍らにはカマドウマがいる。旧家の土間で見かける少々奇怪な姿の虫だ。高瀬晴之学芸員は「視点が不思議。独特の世界がある」と評する◆姫路で健在の長女眸(ひとみ)さんに制作の背景を尋ねた。1941年に妻寿美(すみ)を亡くした後、返礼のため地元・堺の有力者に贈った絵に違いないという。画面に漂う寂寥(せきりょう)感は、献身的に作画を支えた妻の不在ゆえだろう◆明暗がくっきりした生涯だった。絶頂は国画創作協会展で入選を重ねた大正時代。崇高な理想を掲げて発足した同展は、若い画家の憧れだった。その晴れ舞台で、粥川の描く異国趣味と奇想は鮮烈な印象を残す◆それが師土田麦僊(ばくせん)の他界後に陰りだす。自信作が落選し、堺と姫路で保管していた作品や写生帳は空襲で全焼した。晩年はほとんど筆を執らず「誰にも知られたくない」と話したという。49年に52歳で急死する◆「残秋」は3年前、眸さんらの尽力で寄贈された。代表作とはいえないが写生で鍛え抜いた技が光る。8月末まで無料公開される。2020・6・8

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