陸上自衛隊のイラク派遣が迫っていたころだから、17年余り前になる。現地は緊迫している。どんな場面なら、自衛隊員は自分の身を守るために銃を撃てるか。それが議論になった◆内部資料という段階だったが、自衛隊の対処法を紙面で読んだ。襲撃者の発砲に加え「武器を自衛隊員に向けて水平に構えた時点」で相手を撃ってもいいとある。銃を水平に構えること。それは一線を越えること◆国軍のクーデターが起きたミャンマーで国民の抗議デモが続く。時がたつほどに、届く映像がやりきれなくなる。数日前は片膝をつき、銃をゆっくりと水平に構える治安部隊の姿、最近の映像では銃を水平に向け、小走りで乱射する光景。ぞっとする◆銃口の先には、縁者や友人がいるかもしれない。そむけない命令だとしても、デモ参加者を狙うという心のおびえが伝わってこない。それも命を奪いかねない水平撃ちで◆日本の支援を呼び掛けるデモ隊に対し、現地大使館の丸山大使が返した一言に拍手が湧いたそうだ。「私たちはミャンマー国民の声を無視しない」。しかし昨日の国会で菅首相が口にしたのは「日本独自の役割を果たす」。独自の役割ってなんだろう。あいまいな言葉は言っていないに等しい◆銃はノー、ともっと強く。2021・3・4
