正平調

時計2021/08/15

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亡くなる前日のことだ。「起きてる?」と、作家半藤一利さんは布団の中から妻へ声をかけた。驚いて飛び起き「どうしたの?」と尋ねてみたら◆「二千五百年前の人だけど、中国に墨子(ぼくし)という人がいた。あの人はその時代から戦争に反対し続けた。偉いだろう」と言う。「うん」と返したら、「『墨子』を読みなさいよ」と。それが最期の言葉だった◆妻でエッセイストの半藤末利子(まりこ)さんが、インタビューに答えて週刊文春で語っている。東京大空襲を経験し、90歳で没するまで平和を願い続けた。どんな戦争にも正義はない。そう説いた墨子を仰ぎ見ながら◆心の底から平和を求めるのに年齢は関係ないだろう。しかし半藤さんに限らず、戦争を肌で知る人の言葉には揺るぎない信念がある。その世代が一人、また一人と去る。語っていた一言一句を胸に刻んでおきたい◆慶応大教授の片山杜秀(もりひで)さんは、戦争体験を「涙の貯金」とたとえる。平和を保ってきたその貯金が尽きたらどうなるだろう。「平和主義の見直しやファシズムの復活も」と考えたくもない想像が膨らむそうだ◆半藤さんはこんなことも言っていた。「日本人は毎年8月に『正気』を取り戻さないと」。私たちは危うい道を歩んでないか。問い直したい、8月15日。2021・8・15

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