正平調

時計2023/03/25

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印象派を代表するフランスのモネは「光の画家」と呼ばれる。60歳のころロンドンを旅し、深い霧にかすむテムズ川や対岸の英国会議事堂を描いた連作がある。淡い光が満ち、輪郭はあいまいだ。モネの代表作の一つである◆「印象派の作風には産業革命の大気汚染が影響している」とする論文を今年、フランスと米国の気候科学者が発表した。大気の微粒子が光を乱反射し、風景をかすませたとみる。光の絵は「心の景色」ではなく写実の結果-とは、驚きの研究成果だろう◆ときは19世紀後半。石炭利用が急増していたロンドンでは燃焼に伴う二酸化硫黄が増えていたという。「環境の変化が創造的な描き方を生んだ」と論文は指摘するものの、鑑賞する時の印象まで変わってしまう◆こちらは将来にどんな影響を及ぼすだろう。神戸製鋼所の石炭火力発電所を巡る訴訟で、二酸化炭素(CO2)を排出しないよう求める住民の請求を、神戸地裁は退けた◆気候変動に関する国連の報告書は「今後10年のCO2対策が、人類に数千年にわたり影響を与える」と警告している。判決に歴史的な視点はあったか◆産業革命に始まる環境への責任は、言うまでもなく人にある。現代の芸術にも未来の人が眉をひそめる現実が描かれているのかも。2023・3・25

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