ビーグル号はその昔、英国の博物学者ダーウィンが世界を巡った調査船の名だ。5年に及ぶ航海は主著「種の起源」に結実し、進化論の確立につながった◆この冒険心に満ちた船にちなんで名付けられた詩の雑誌がある。関西発の季刊誌「びーぐる-詩の海へ」。毎号ユニークな特集が組まれ、届くのが楽しみだった◆船出は2008年秋。乗組員は詩人の高階杞一、細見和之、四元康祐、そして山田兼士の各氏である。4人が持ち回りで企画を立て、ベテランや新人、海外の詩人も紹介するなど、まさに新たな詩の地平を切り開いてきた◆創刊は戦後詩を率いた「詩学」をはじめ、詩誌の廃刊や休刊が相次いだ時期。このままでは詩人が世に出る場が失われてしまう-。危機感を抱いた山田さんが他の3人を誘い、同人誌でなくあくまで商業誌として、詩と社会をつなぐ媒体を作った◆本家ビーグル号の3倍にあたる15年間、誌齢59号をもって「びーぐる」は今春、航海を終えた。機関長の役割を担ってきた山田さんが昨年12月に亡くなったためだ◆〈ここにぼくの生が生き/生が苦しみ 生が夢見てきた〉とは晩年の詩の一節。夢を乗せた船はひとまず帆を下ろしたが、詩は必ずや生き残る。新たな世代に継がれ、進化を続けながら。2023・5・6








