毎年冬になると、兵庫県洲本市下加茂1のスーパー、マルヨシセンター洲本店の店頭に、毛糸でできた小さな雪だるまとクリスマスツリーの置物が登場する。作ったのは、3年前にがんで亡くなった30代女性。生前に譲り受けた店員が大事にし、この冬も、年の瀬の買い物客の心を和ませる。(吉田みなみ)
同市の西岡慶江さん=当時(38)。2児の母だった。手芸が趣味で、西岡さんの母八重子さん(63)によると、洋服やブレスレットなどを作っては、家族や八重子さんの知人らにプレゼントしていた。
店の置物は、7年前に作ったものという。雪だるまが3体。クリスマスツリーが1本。いずれも、毛糸を球状に仕立てたボンボンが組み合わさっている。当時、同店にパートで勤めていた八重子さんを通じて売り場の装飾担当に届け、店頭に出るようになった。
5年前、西岡さんにがんが見つかった。幼い子どもたちのためにと気丈に振る舞って闘病し、2018年5月に亡くなった。
八重子さんは娘の看病に専念するため、3月に店を辞めていた。失意の底が続いていたその年の冬、客として同店を訪れ、ふと置物の存在に気が付いた。「忘れずに飾り続けてくれることが何よりありがたい」と感謝した。「孫も『ママの雪だるまだ』とうれしそうだった」と話す。
西岡さんの訃報は同店にも届いていたが、店員が「手作りで思いがこもったものだろう」と置物を保管し、買い物客にも好評だったため飾り続けることにしたのだという。
ある年はレジの横、ある年は鮮魚コーナーへ。今年は11月末から、サービスカウンター横の棚に飾られている。控えめに愛嬌(あいきょう)を振りまきながら、時折訪れる子どもたちの成長を見守っている。