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4年目の畑でワイン用ブドウの木を見つめる小谷雄介さん=淡路市仁井
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4年目の畑でワイン用ブドウの木を見つめる小谷雄介さん=淡路市仁井
小谷さんの畑でとれたブドウで試験醸造したワインを手にする井壷さん=洲本市山手1
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小谷さんの畑でとれたブドウで試験醸造したワインを手にする井壷さん=洲本市山手1

■醸造用ブドウ・栽培

 海が見え、空が近い兵庫県淡路市仁井の丘陵地で、純淡路島産のワインを造ろうと動き出した人たちがいる。

 1人は、神戸市東灘区出身のブドウ農家小谷雄介さん(54)。岩手県で栽培とワイン醸造に携わった後、約3年前に兵庫へ帰郷。身近な適地を探し、仁井にたどり着いた。栽培は4年目に入った。

 もう1人は、洲本市山手1にあるイタリアンレストラン「リゾレッタ」のオーナーシェフ、井壷幸徳さん(55)。仁井で生まれ育った。淡路島産の食材を使うことにこだわっている。「いつかはワインも」と思ってきた。

 そんな2人が出会い、ワインと料理を楽しめるレストランやカフェを併設する醸造所の計画が生まれた。

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 小谷さんは元々、東京で会社員をしていた。2011年3月11日の東日本大震災を機に、ボランティアとして岩手へ移り住んだ。被災地の復旧復興から障害者が取り残されていると知った。「周囲に迷惑がかかるから避難所に行けない」「福祉作業所の再開が遅れている」などの声を聞いた。NP0に身を置き、就労支援に取り組んだ。

 太陽の光を浴びながら作業できる環境を作ろうと、ハーブを栽培した。その後、見学した長野県のワイナリーで「ワイン生産は畑作業、瓶詰め、ラベル貼りなど障害者が担える業務を多様化できる」と考えた。

 14年、岩手県釜石市の約0・5ヘクタールの土地でワイン用ブドウの栽培を始めた。17年には、隣接する遠野市に醸造所を開設。栽培から醸造まで一貫して手掛け、知的障害、精神障害がある人ら35人が常時働く場所となった。

 19年、仲間に託して帰郷した。西宮市で1人暮らしの母が体調を崩し、近くにいたいと考えたからだ。何をするか。「自分が好きな仕事はやっぱりブドウ栽培とワイン醸造」だった。

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 仁井は、耕作放棄地と就農希望者をマッチングさせる県の説明会で知った。標高200メートル。寒暖差があり、ブドウ栽培に向いているという。見渡す海の先に神戸の街並みが見える。明石海峡大橋を渡って母の元に通える。

 約1ヘクタールの土地を借り、移住した。19年4月から開墾し、1カ月後に苗木を植え始めた。20年初秋に最初の収穫を迎えた。約50キロとれた。遠野の醸造所へ持ち込み、ワイン50本を試験醸造した。21年は作付面積を増やし、約180キロ収穫した。

 「岩手に比べて温暖なため、収穫を早くしている。雨が多く病気になりやすいため予防薬を調整している。環境が変わって苦労もあるが順調」と話す。栽培地は計2ヘクタールになった。白ワイン用2品種、赤ワイン用2品種を手掛ける。目標は5トン~6トンの収穫と、年6千本のワイン生産という。

 仕込み方も考え始めている。「島の食材に合わせるには、どれくらいの酸味がいいか。口に入れた時、島のイメージが広がるようなフルーティーさも欠かせない」。想像は尽きない。(中村有沙)

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 淡路島は1998年4月の明石海峡大橋開通から25年目に入った。人を訪ね、四半世紀の移り変わりと今を伝えたい。まずはフルーツをめぐる物語から。

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