衆院選2017
10月10日公示 10月22日投開票
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100歳を超す義母を自宅で介護する女性。急増する社会保障費の財源をどう確保するかは大きな課題だ=明石市内(撮影・中西大二)
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100歳を超す義母を自宅で介護する女性。急増する社会保障費の財源をどう確保するかは大きな課題だ=明石市内(撮影・中西大二)

 自民、公明、旧民主の3党は2012年、当時5%だった消費税率を2回に分けて10%に上げ、増収分を社会保障に充てることで合意した。だが、安倍政権は8%から10%への引き上げを2度延期。産業界などから歓迎された半面、社会保障分野にはしわ寄せも生じている。(新開真理、井上太郎) 

 みそ汁の具と焼き魚をミキサーでつぶす。ご飯はおかゆにして、栄養飲料はゼリーで固める。明石市内の男性(72)が、自宅で母親(104)を介護するようになり、約10年がたつ。

 「お金取られた」「お前は悪者や」。寝たきりの母にののしられる。認知症の影響だと分かっていても、胸に突き刺さる。1時間ごとに起こされる夜も。毎日5回、食事の世話やおむつ交換にヘルパーが自宅を訪れるが、3食の準備、たんの吸引などは男性と妻(68)が担う。

 訪問入浴や医師の往診費は介護保険では賄いきれない。おむつや口のケア用品などに毎月3、4万円。「ポイントが多い日にまとめ買いして」支出を抑える。

 ここ数年、一番遠い外出先は車で15分の薬局。親類の葬儀も欠席した。短時間の預かり制度の存在は知っているが、母が望まない。せめて一日、自宅で面倒を見てもらえたら、そして夜間の相談相手がいたら…。

 望むのは個々の実情に合った福祉サービスだ。その充実と利用者支援には、大きな財源が必要となる。

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 消費の動向に直結する消費税増税。14年4月の8%への引き上げ後、国内総生産(GDP)は一時的とはいえ大きく落ち込んだ。

 「そら、助かった」。自動二輪や自動車大手に部品を供給する中堅メーカー、安福ゴム工業(神戸市西区)の安福忠昭会長(73)は10%への増税延期判断をそう振り返る。

 8%への増税で、減少傾向にあった国内のバイク販売台数はさらに落ち込み、売り上げは年間6億円ほど減った。自動車部品に軸足を移したが、国内の新車販売台数も不振で、海外での販売強化に活路を求める。

 「また増税されるとどうなってしまうのか」。不安が募る一方、膨らみ続ける国の借金と社会保障費を前に、今回の衆院選で飛び交う増税回避の訴えは非現実的にも響く。

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 「苦労も多いが、高齢者らの自立を支える喜びも大きい仕事」。明石市内の高齢者施設で働く社会福祉士の女性(57)は誇りを持ちつつ、遅々として進まない介護従事者の待遇改善に「働き手がどんどん減っている」と声を落とす。

 増税などない方がいいに決まっている。でも、良質なケアを提供するため、人材を確保したり、技術を高めたりする環境を整えてほしい。その財源が増税でしか生み出せないなら「やむを得ない」とも思う。

 兵庫県内で要介護認定を受けている人は約19万3千人(今年7月末)。高齢化が加速する今後、急激な増加が見込まれている。

【消費税増税】第2次安倍政権発足から2年後の2014年11月、首相は消費税率10%への引き上げを1年半延期すると表明。その信を問うとして衆院解散・総選挙に踏み切った。16年6月には、さらに2年半の延期を決めた。今回、19年10月からの引き上げに伴う増収分の使い道を、国の借金返済から幼児教育の無償化などに変更するとし、それを解散理由の一つとした。野党は引き上げの凍結や中止を公約に掲げている。

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