衆院選2017
10月10日公示 10月22日投開票
連載
  • 印刷

 「勝因? 分からないね」。衆院選が投開票された22日夜、兵庫1区の自民前職盛山正仁(63)は、「当選確実」の報に沸く神戸市内の事務所で浮かない顔つきだった。

 2014年前回は比例復活に甘んじ、今回も連続して小選挙区で敗れたら「次回の公認はない」と告げられていた盛山。兵庫の自民候補では唯一、首相安倍晋三が応援に入るなど党を挙げた支援を受けたが、他の与党候補に続々と「ゼロ当確」が出る中、盛山の1区だけがもつれ込んだ。

 結果は、希望の党前職に約1万2700票差で競り勝ち4選。だが、希望の失速や、希望と日本維新の会の競合に助けられた面は否めず、「野党が一本化していたら議席を失っていたかも」と漏らした。

 安堵(あんど)してばかりいられない背景には党内での立ち位置もある。「潜在的に安倍政権に不満を持つ人は多いはず。傲慢(ごうまん)に見えるやり方は見直さないといけない」と繰り返した盛山。兵庫関係の自民議員でただ一人、党政調会長で「ポスト安倍」の最右翼とされる岸田文雄が領袖(りょうしゅう)の派閥「宏池(こうち)会」に属する。

 岸田は安倍を支えることで「禅譲」を狙ってきたが、自民の大勝で、結果的に解散戦略がはまり「安倍1強」が盤石に。来年9月の党総裁選で安倍が連続3選を果たせば、4年後まで後継のお鉢は回ってこない。もう一人の有力候補、元幹事長石破茂の「水月会」を含め、各派閥は戦略の見直しを迫られる。

    □  ■

 「衆院選で同じ総裁が3回続けて勝利を得たのは、結党以来60年余りの歴史で初めてだ」。23日、会見した首相安倍は自らこう誇ってみせた。参院選を含めると国政選挙5連勝。自民、公明両党で、改憲の国会発議に必要な3分の2議席を超えた上、希望と維新も改憲に前向きで、解散前より「改憲勢力」が膨張した。

 自民は今回初めて公約に、自衛隊の明記など四つの改憲項目を掲げた。会見では野党を含め合意形成を図るとしたが、「政治だから全ての皆さんに理解いただけるわけではない」とも。

 だが安倍にも誤算はある。民進党から分裂した立憲民主党の躍進だ。改憲そのものは否定しないが、集団的自衛権を追認する9条改正には反対の立場。1955年以降で最小の野党第1党とはいえ、無視して強引に発議に踏み切れば、国民投票で反発を受ける可能性がある。兵庫6区の自民前職大串正樹(51)も猛追を受け、1区に次ぐ激戦に。3選は果たしたが「森友、加計(かけ)問題で説明が不十分という印象を持たれている」と反省を口にした。

 一方、連立のパートナー公明は比例定数の削減などが響き、公示前の35議席を29議席に減らした。党として「力量が足りなかった」との声明を出したが、兵庫の関係者に悲愴(ひそう)感はない。

 「自民の大勝は、われわれが比例の底上げで活発に動いたから。感謝してほしい」。兵庫でも中盤以降は、公明が比例票獲得のため、選挙区の自民候補を積極的に推す動きが目立った。

 公明関係者の一人は「2年後の参院選では不満を言われたら困る」と昨夏の参院選に続く独自候補の擁立を示唆する。

 圧勝は与党内の力学にどんな変化をもたらすのか。

=敬称略=

(衆院選取材班)

連載
一覧

天気(9月8日)

  • 33℃
  • 28℃
  • 40%

  • 33℃
  • 25℃
  • 50%

  • 34℃
  • 28℃
  • 20%

  • 34℃
  • 27℃
  • 40%

お知らせ