衆院選2017
10月10日公示 10月22日投開票
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 「信任を賜り、市政を担う責任の重さに身が引き締まる」

 神戸市長選の投開票翌日の23日午後、市会本会議場。再選を決めた市長久元喜造(63)が全市議を前に神妙な面持ちであいさつに立った。市長選で得た史上最多の34万票について、久元はその日朝に出演したラジオ番組でも「私の力より、衆院選で投票率が上がった結果」と何度も謙遜した。

 だが、その後の記者会見では早くも「圧倒的支持」の自負をのぞかせた。「(官僚のままで)政治家らしくない」との人物評や、総花的な施策展開など選挙前に受けた批判を持ち出し、「市民は私を選んだ」と2度にわたり反論を加えた。

 本会議場のあいさつは「断固たる決意をもって、必要な政策に積極果敢に挑戦していく」と締めくくられた。4年前、対立候補の会社役員(現兵庫県議)樫野孝人(54)に迫られ、薄氷の勝利で市役所に乗り込んだ際と違い、その宣言は議場により強く響いた。

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 当初から、圧勝の筋書きがあったわけではない。久元が立候補を表明した6月以降、市幹部が神経をとがらせたのは樫野の動向だった。樫野率いる地域政党「神戸志民党」幹部は8月下旬まで樫野の立候補と維新との一本化を模索した。さらには共産との調整さえ図ろうとしたが、いずれも不調に終わった。

 誤算は対立陣営にもあった。維新は告示のほぼ1カ月前になって市議光田あまね(40)の推薦を決定した。その直前には政務活動費(政活費)の不正受給問題で自民系市議4人が相次ぎ辞職。光田は、自民の推薦を受ける久元への攻勢を強め、政活費問題を争点に上昇をもくろんだ。

 だが、同日選となった衆院選の陰に政活費問題はかすんだ。さらに限られた組織力を衆院選にも振り分けなければならず、与野党3極対決で埋没した維新に、市長選の劣勢を覆す風は吹かなかった。

 守勢に回った久元は政活費問題には触れず、街頭で自民市議らと並び立つことも控えた。それでも追い打ちをかけるように、推薦を受ける民進が市長選告示前に分裂。陣営は史上初のダブル選による読めない無党派層の動向に気をもんだ。

 結局、自公で計313議席を獲得した衆院選の追い風が久元を押し上げた。

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 この日、市会に登壇した久元の真向かいに6人の市議補選当選者が並んだ。うち4人が加わった自民党議員団は近年では最多の21人に増え、第一会派を維持。衆院議員が希望と立憲民主に分裂し、政党の基盤を失った民進会派の存在感が揺らぐなか、自民の影響力は一層増すことになる。

 「国政での自公の勢いに助けられた」。議員団長の安達和彦(63)は欠員全4区で議席を得た市議補選の結果に安堵し、「100%ではないが、政活費問題のみそぎになった。与党の中心として市長を支える」とアピールした。

 一方で「行き過ぎた時には当然ブレーキをかける」と、自信を深める久元の動きに釘を刺す。自民の古参市議も「市会も民意を背負っている。歯止め役となる議会の責任は重くなる」と息巻く。

 衆院選で大勝し、政活費問題での失地を回復して勢いづく自民と、「民意」を力に公約実現のスピードアップを図る久元。市政の主導権をめぐる駆け引きが始まった。

=敬称略=

(神戸市長選取材班)

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