
お気に入りは?(撮影・斎藤雅志)
うちから歩いて行ける最後の書店が、今年の初め、ついに閉店してしまった。私が中学生だった頃は、子どもの足で歩いて行ける範囲内に4~5軒の書店があったものだ。それが、いまやゼロ。
出版不況と言われて久しいが、書店の数も年々減少の一途をたどっている。1999年には全国で約2万2300店存在したのが、今年は1万4250店ほどになった。14年で36%減である。「街の本屋さん」が姿を消しつつあるという。大人は行動範囲が広いし、ネット書店や電子書籍といったものもあるからおおむね問題ないが、心配なのは子どもたちだ。自分が子どもの頃、数百円の小遣いを握り締めて文庫本を買いに走った、あの高揚感を今の子どもらは味わう機会がないのではないかと思うと、残念でならない。学校や自治体の図書館が最後の砦(とりで)になるのかもしれないが、自分だけの本を所有する喜びというのも、確かにある気がする。もちろん、自分で自由に書物を選ぶ喜びもある。
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