ひと・東灘魂

阪神御影駅のすぐ南に、昭和レトロなカラオケラウンジと並び建つ居酒屋がある。屋号は「なだ番」。創業者の息子、山下春幸さん(52)はこの厨房(ちゅうぼう)で料理人としての第一歩を踏みだし、東京進出を経て2010、12年、世界の料理人が腕を競う美食の祭典「ワールド・グルメ・サミット」で最高賞に輝いた。厳選した食材の味を最大限引き出す「新和食」という分野を切り開き、現在は米国とシンガポールでもレストランを経営。世界を股に掛けるトップシェフに、原点となった御影時代のエピソードや転機を振り返ってもらう。(文中敬称略)

世界を股に掛けるトップシェフ、山下春幸さん(52)は、阪神御影駅南の居酒屋「なだ番」創業者の息子として、この厨房(ちゅうぼう)で料理人としての第一歩を踏みだした。店舗経営や海外のレストラン勤務をへて、なだ番に戻っていた20代後半の山下さんはある日、常連客にお任せの一品を注文される。自信たっぷりに出したカルパッチョ風の刺し身だったが、客は一切れ食べただけで箸を置いた。(文中敬称略)
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