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認知症診療の現場

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認知症患者と家族に困りごとを尋ねる古和久朋教授=神戸市中央区楠町7
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認知症患者と家族に困りごとを尋ねる古和久朋教授=神戸市中央区楠町7

認知症患者と家族に困りごとを尋ねる古和久朋教授=神戸市中央区楠町7

認知症患者と家族に困りごとを尋ねる古和久朋教授=神戸市中央区楠町7

 6年前に神戸大医学部付属病院の認知症専門外来「メモリークリニック」を訪れ、認知症の前段階にあたる「軽度認知障害(MCI)」と診断された70代の男性。現在は、少し症状が進み、アルツハイマー型認知症の初期となっています。日常生活を支える妻と、診療に携わる同大学院保健学研究科の古和(こわ)久朋教授(49)に、診断後の経過や、症状の進行を緩やかにする工夫などを聞きました。(貝原加奈)

 男性は神戸市在住で、2013年12月、妻に連れられて、同クリニックを受診しました。問診や磁気共鳴画像装置(MRI)検査、字の読みや簡単な計算をするテストの結果などから、「軽度認知障害」との診断を受けました。

 -受診のきっかけは?

 妻「元々主人はこまやかできっちりした性格でした。でも、67歳で退職してしばらくすると、約束もないのに出掛けたり、お金の管理ができなくなったり、『おかしいな』と思うことが目立つように。そんな時、夫の友人から『どうも様子がおかしい。一度受診したほうがいい』と本気で勧められたんです。その人が紹介してくれた地域の病院を経由して、メモリークリニックを受診しました」

 -最初に来た時は。

 男性「全然覚えてないなあ」

 古和氏「少し顔をしかめていた感じでしたね」

 妻「すごく元気な人なんですよ。だから自覚もないのに、病院へ連れて行かれることにものすごく戸惑いがあったと思います」

 古和氏「もの忘れの症状があり、MRIの検査で少し脳が萎縮していたため、アルツハイマー型の前段階だと判断しました。身支度や家事などに支障はなく、生活ができていたこともそう判断した理由ですね」

 -診断後の生活は。

 妻「それまで薬を飲んでいなかったこともあり、認知症の薬の治験(臨床試験)を勧められました。でも、治験中に、内臓の病気が見つかり、1カ月入院することになりました。退職後、毎日家にいてお酒を飲む日が続いていたのがよくなかったんでしょう」

 古和氏「病気が落ち着いてから、気分が穏やかになる『メマリー』という認知症治療薬の処方を始めました。飲酒を減らすこと、食生活、筋肉量を保つための運動などについてもアドバイスしました」

 妻「1日2時間一緒に歩いたり、家にあるお酒を全部処分したり、家族でできるだけのことをしました。主人も自覚して自制してくれるようになりました」

■診断から6年、症状進行緩やか

 -診断を受け止めるのは難しくなかったですか。

 妻「早期発見だったと先生は言ってくれましたが、正直、『あぁ、これで自分の時間は持てなくなるな』と、しばらくは外に出るのも嫌になりました。でも娘に愚痴をこぼした時『それはお母さんの問題や』と言われて。隣には何も変わらず、穏やかで家事もよくしてくれる主人がいる。認知症について無知だった自分を反省しました。月に1度の診療で、先生が私たちの頑張りを褒めて下さることにも励まされました」

 -現在、アルツハイマー型認知症の初期。生活は?

 男性「家のこともやれることはやります。子どもの頃からやってたから」

 妻「要介護1の認定を受け、週3日、運動型のデイサービスを利用しています。その間、私は自分の時間をゆったりと過ごします。それ以外の日は、2人で他の認知症の人やご家族と集まって、おしゃべりや体を動かすゲームを楽しみます。もの忘れは進んでいるようですが、何回も教えてあげたらいいだけのこと。生活する分には困らないかな」

 -症状の進行が緩やかなのはどうしてですか。

 古和氏「本当のところはよく分かりません。ただ、早期に発見して、ある程度ご本人が自覚できていることと運動ができること、家族のサポートがあることの三つがそろっているのが大きいのではと思います」

【軽度認知障害(MCI)】年齢相応の認知機能レベルよりも記憶などの能力が低下している状態。正常な状態と認知症の中間にあたり、日常生活に支障をきたさない点が認知症と違う。アルツハイマー型認知症などの前段階で、時間がたつと認知症に移行する確率が高い。この時期に生活習慣を見直すことで、認知症の発症を遅らせたり、防いだりできるとされる。

2019/7/19

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