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認知症診療の現場

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夫と手をつなぎ病院へ向かう女性=神戸市中央区楠町7
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夫と手をつなぎ病院へ向かう女性=神戸市中央区楠町7

夫と手をつなぎ病院へ向かう女性=神戸市中央区楠町7

夫と手をつなぎ病院へ向かう女性=神戸市中央区楠町7

 兵庫県三木市の女性(68)は7年前、神戸大医学部付属病院の認知症専門外来「メモリークリニック」を受診し、言葉の意味などが分からなくなる「語義性失語症」と診断されました。その後ゆっくりと症状が進み、現在は言語力の低下に加え社会性が失われる「前頭側頭型認知症」に。女性の夫(63)と、診療に携わる同大学院保健学研究科の古和(こわ)久朋教授(49)に、症状の推移と、それにどう対応したかなどを聞きました。(貝原加奈)

 2012年12月、女性は物忘れや言葉が出にくいなどの自覚症状があり、夫と一緒に同クリニックを受診。問診や磁気共鳴画像装置(MRI)での検査結果などから、言葉の意味や、物の呼び名などの知識が失われる語義性失語症との診断を受けました。

 -最初はどんな症状が?

 夫「子育てが一段落したころから、気分の落ち込みなどが激しいうつ状態になりました。私は仕事が忙しく気が付きませんでしたが、本人は『おかしい』と思ったらしく、07年から他の病院に通っていたそうです。翌年に父と母の介護をしないといけなくなり、妻は負担を感じたのか寝られない日が増えていきました」

 -妻の症状に気付いたきっかけは。

 夫「家事も普通通りにやっていたんですが、『どうも物忘れがある。言葉が出にくくなった』と自覚があったようで…。妻からそんな相談を受けて初めて、病院に通っていることを知りました。それから、かかりつけ医にこのクリニックを紹介してもらいました」

 -脳の機能を保つためにどんな工夫をしましたか。

 古和氏「語義性失語症の人に認知症の診断テストをしても、言葉の理解が難しいので点数が悪くなるのは当然です。ただ、言葉をつかさどる脳の回路が使えなくても、物はイメージで理解することができます。別の回路を使って生活することをアドバイスしました」

 夫「例えば、料理で使う材料や調味料をすべて写真に撮ってノートにまとめました。写真を見ながら、3、4年は自分で料理ができました。字が読めなくなった15年からは言語聴覚士に自宅に来てもらい、字を書き写すリハビリをしています。でも、1年ほどしてから書くのもゆっくりに。左側の側頭葉ですから、右の手や足に影響が出て、鉛筆を握るのも大変です」

■「気分安定し笑い返してくれる」

 -前頭側頭型認知症と診断したのはいつですか。

 古和氏「3年ほど前です。お子さんの家に行ってもすぐ帰りたがるなど、言葉以外の症状が目立ち始めました」

 -どんな治療を。

 古和氏「保険適用外ですが、ずっと、気分が穏やかになるメマリーという薬を処方しています。一度飲み忘れて夜寝られなくなったこともありましたが、イライラすることも少なく、安定しています」

 -現在の生活は。

 夫「『み、み』しか言えなくなり、妻の言いたいことは視線や表情で読み取ります。1人で出歩いて道ばたに倒れていたことがあったので、いつも一緒にいます。現在は要介護3で、歩くためのリハビリになればと、買い物は週3回一緒に行っています。『自分が病気になったらどうしよう』と思い、ショートステイの利用も始めました。週1回のデイサービスの日に、趣味のテニスをして気分転換しています。近所の人には緊急の連絡先を渡して、妻の状態を伝えています」

 -今の心境を教えてください。

 夫「最初、治せない病気だと聞いた時はショックでした。でも、若い時に苦労させている分、僕が妻のお世話ができてよかったなと本当に思っています。笑いかけると妻も笑い返してくれる。僕自身が健康でいることが一番大切ですね」

【前頭側頭型認知症】人格や社会性などをつかさどる前頭葉や記憶・言語・聴覚をつかさどる側頭葉の萎縮により起きる認知症。初期の段階では、こだわりが強くなるなどの性格の変化や同じ行動を繰り返す、言葉の理解が難しくなるなどの特徴的な症状が現れる。70歳ごろまでに発症するケースが多い。進行を防ぐための有効な治療方法は開発されていない。

2019/9/18

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