【大災害 その時どう生き抜く】
〈学生代表と岡田武史さん座談会〉
岡田さん 自分で判断する力育てたい
成田さん 多様な意見聞くことが大切
木下さん 避難準備の大切さ広めたい
中川さん 水のありがたみが分かった
松浦さん あきらめず経験伝え続ける
-なぜ避難所体験合宿に参加しようと思ったのか。
木下 もともと救急医療にも興味を持っていた。地震や他の災害が起こったとき、自分に何ができるのだろうかと考え、参加を決めた。
成田 2年半前から、心理学や経済学などの側面から防災に関する研究を続けていたが、現場で体験していろいろなことを感じたいと思った。
松浦 1年ほど前から東日本大震災の被災地へボランティアに行っている。避難所で実際に自分にできることは何だろうと考え、参加した。
中川 阪神・淡路大震災は人から聞いた話でしか知らない。自分で何かアクションを起こす中で、震災に関する知識を蓄えたいと思い参加した。
-2日間の体験で、どのような学びがあったか。
成田 防災研究で考えたことを広く伝えていくにも、まず順序がある。今回の合宿では、積極的に多様な意見を聞くことの大切さを感じた。
岡田 防災のことだけでなく、何事でも最後はコミュニケーションの問題に行き着く。さまざまな原人がいた中でホモサピエンスだけが生き残れたのは、言葉を発明したからだ。インターネットの発達で、情報を集めるのもモノを買うのも自宅で済むようになっているが、社会で生きていくために一番大事なのは、面と向かってのコミュニケーションだ。自分が実際に体験して得た一次情報を基に、自分で物事を判断する力を養ってほしい。私が野外体験の活動に力を入れているのもそういう理由からだ。
松浦 便利な生活が当たり前になっているが、今回はそのありがたみを感じることができた。空き缶で炊いたご飯がおいしかった。生きているという実感を味わうことができた。
中川 水のありがたさは分かっているつもりだったが、今まで水がなくて困る状況に直面することはなかった。2日間の生活で、トイレの水が流れない、手を洗う水もない大変さを実感した。蛇口をひねったら水が出ることが、どれほどありがたいことか。家で水を備蓄しておく必要性を感じた。
岡田 地球上にある全ての水の中で、淡水は2・75%しかない。しかもその水は人間だけでなく動植物も使っている。森林があるおかげで水は蓄えられ、土の中を通ってミネラル分を含んで海に流れ、良質な漁場ができる。宮城県気仙沼市でカキを養殖している人は、森に木を植える活動をしている。備蓄するという発想はすごくいいのだが、その前に循環がうまくいくことも大切で、発想を広げて考える力を身に付けてほしい。
木下 参加前に「自分の避難用キットがあれば持ってきて」と言われていたが、それすら持っていなかった。今回の体験は、いろいろなものを準備してもらっていたからできたことだ。実際に被災し、何も準備していない状態なら何もできない。このことを多くの人に広めていかなければと感じた。
成田 岡田さんと話していて、物事を考えるためにはもっと本を読まなければと痛感した。特に将来のさまざまな災害に対して、知識を持って考えられるようにしておきたい。
岡田 僕はローマクラブの「成長の限界」という本を読んで環境に興味を持った。マルクスの資本論を読んで、民主主義や資本主義のあり方にも関心を持った。きっかけはまず本だ。それでも分からなければ大学の先生に直接教えを請いに行く。サッカーのことでも僕は年下にも平気で頭を下げて聞きに行ける。
中川 高校生ぐらいまではいろんなことに不満を感じていて、もっとこうなったらいいのに、と思っていた。なのに今では何かあきらめている自分がいた。何かを変えたいなら、自分から動かないといけないと感じた。
岡田 あきらめたら終わり。僕には3人の子どもがいる。災害が起きたら、僕はみんなを救おうというより、まずこいつら3人のために父親として絶対あきらめちゃいけないと思っているから、考え、動いているだけ。サッカーの試合でも、あきらめなかったら何か起きるかもしれない。
-2日間で学んだことを基に、どんな行動を起こしていこうと考えているか。
木下 自分の家族がちゃんと避難できるように、何が必要なのかを考え、あらかじめ用意するように伝えたい。もう少し大きく言えば、同年代にこの思いを広げていきたい。
成田 僕もより多くの人を巻き込んでいくことが大事だと感じだ。大学でも地域や子どもたちのために、さまざまな活動をしている団体がある。そういう人たちと一緒にできることを考えてみたい。
松浦 東北のボランティアで経験したことを、神戸の学生たちに伝えてきたが、結局ひとごとで済まされてしまう限界を感じていた。それでもきょうの話を聞いて、これからもあきらめずに伝え続けていきたい、と思った。
中川 伝えるためには、相手がどうすれば聞いてくれるかを考えなければいけない。防災をファッションに、という活動に取り組んでいる人がいるが、分かりやすい形にすれば受け入れてもらえるかなと思う。先日は、新聞紙でスリッパを作って卵の殻の上を歩いてもらうワークショップをしたのだが、そのように遊び感覚で体験してもらえるようなことも考えたい。
-阪神・淡路大震災から20年がたった被災地に対して、岡田さんからあらためてメッセージを。
岡田 阪神・淡路大震災の教訓は、日本人全体の教訓として残していかなければいけない。今回、避難所体験した皆さんが新たな思いを持って、その教訓を伝えてくれようとしている。私たち大人も、彼ら彼女らの思いに積極的に耳を傾け、支えていかなければ、と思っている。
<座談会参加者>
■木下恵梨沙さん(神戸大学医学部医学科6年)
■成田 健吾さん(兵庫県立大学工学部機械システム工学科4年)
■松浦 森郎さん(神戸大学発達科学部3年)
■中川 悠美さん(関西学院大学総合政策学部都市政策学科3年)
■岡田 武史さん(サッカー解説者、元日本代表監督)
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